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お返しのホワイトラテ
恋愛系。ホワイトデー。
喫茶店のドアを開けると、弾けるようなベルの音が鳴る。コーヒー豆を挽いた時の、香ばしいフレグランスが鼻腔を通り抜けた。
私は彼氏と窓際の席に座る。
彼は運ばれてきたコーヒーにガムシロップを加え、ゆっくりと口に運ぶ。彼が微糖のコーヒーを好む事は、付き合ってから知った。
彼は鞄から、小さな黒い箱を取り出した。箱の中で白銀の花が輝く。花を模した装飾が付いた、金色のブレスレットが入っていた。
「お返しだ。バレンタインの」
彼の双眸が、真っ直ぐに私を見つめる。
「こんな、豪華なもの……」
私なんて、小さなカップケーキを作っただけなのに。
「お前に似合うかなって」彼は目を細める。
私はほのかに温かいカフェラテを口に運んだ。ほころんだにやけ顔を隠すためだ。
――これ、甘いな。
私はカップを置き、贈り物に手を伸ばした。
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