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もう一つの塵積もりひいな
青春、微恋愛(?)
「お邪魔しまーす」
部屋に入ると、見慣れない七段飾りの雛壇が俺を出迎えた。真っ赤な台の上に、火鉢や鏡台の飾りと、そして人形が並んでいる。
「どう? すごいでしょ?」
腐れ縁の少女が、得意げに胸を張っていた。
これまでは、彼女の母親が実家で使っていた、三段飾りの小さな雛段だったはずだ。
「お前もこいつも、無事に高校受かったからな、そのお祝いだ」
そう言ったのは、俺たちより一つ上の、少女の兄だった。
「また同じ学校だね、よろしく」
俺はわざとらしくため息を吐いて、嫌な顔を作ってみせた。
彼女は「何で嫌そうなの」と言って、俺の肩を小突く。
そのやり取りを、内裏雛と兄が微笑ましく見ていたのだろう。
――もう四年前の事になる。
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