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内にいるのは
節分ネタ。病み系。
閉め切ったドアの向こうから、からからと何かが床に落ちていく音が聞こえてくる。
鬼はー外、福はー内。
父と母、それから妹の弾けるような笑い声が、壁の外から部屋へと侵入してくる。
私は耳を塞いだ。それでも、音は近づいてくる。鼓膜をすり抜け、頭の中へと。
部屋が小さく揺れた気がした。妹がドアをノックしたのだ。
「お姉ちゃん……」か細く揺れる声だった。
「うるさい、放っておいてっ!」
ドアの向こうで、妹は体を強張らせただろう。少しして、足音は遠ざかっていった。
この中に閉じこもり、もうすぐで一年経つ。
妹はできる子だ。大学に入って恋人もできた。初々しい牡丹の着物がよく似合っていた。
私には着こなせない。顔立ちが同じでも。
頭、愛嬌、運。全てにおいて、私は下だ。
神様に愛されているかのような、双子の妹は、今日も私をいらない子にする。
ご愛読、ありがとうございます。