表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
およそ原稿用紙1枚の短編集  作者: 柊 真詩
24/25

甘美な酸味を

自殺予防週間。

「お姉さんは、最近どうだ?」

 私は、オレンジタルトにフォークを刺したまま手を止める。そして、彼へ視線を上げた。

 彼はチョコクッキーを小さく齧って、微糖のコーヒーを啜っていた。

「お姉ちゃんの事聞いてくるの、珍しいね」

「不謹慎だけど」彼は言い淀みながら、言葉を続ける。「自殺予防週間の記事を見て」

 私は返す言葉を考えながら、ブレスレットについてある花の装飾を指でなぞった。

「……自殺はきっと大丈夫。誰かに、殺されたがってる時もあったけど」

 オレンジタルトを口に運ぶ。

 タルトの上に並ぶオレンジは酸っぱかった。

「人殺しには、なるなよ?」

 笑いながら被りをふろうとしたが、言葉が喉奥へと押し込まれる。

 彼の瞳に、冗談の色が混ざっていなかった。

 無言で頷いた私が気になったのは、その後の沈黙ではなく、彼の重苦しい雰囲気だった。

ご愛読ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ