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温もりでわたあめを溶かして
病み系。
深夜二時。家族は寝静まっているだろう。
九月に入ると、クーラーを付けない日も出てくる。けれど、お手洗いのためにリビングへ向かうと、冷涼な空気が満ちていた。
さらに驚いたのは、母が電気も付けずに座っていた事だ。
つらくない? 母の言葉が私を引き止める。
私は言葉を飲みこんだ。
「絵は……どう? 最近は、前よりも苦しそうに見えるから。ねえ、もう充分頑張ったじゃない。これ以上……」
私は耳を塞ぎながら、部屋へと駆け戻った。
――頑張らなくていいじゃない。
その声を追い出すように、ドアを閉めた。
私は袋の中でわたあめを小さくちぎって、口の中に放り込む。静かに溶けて、元々何もなかったかのように、消えていく。
残るのは、粘っこい甘さだけ。でも、この甘さが小さい頃から好きだった。
私は、わたあめみたいになりたいと思った。
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