21/25
夕焼けにわたあめを浮かべて
夏祭り。
心に少し針を刺したような、そんなちっぽけな寂しさを感じる瞬間がある。
私は屋台の店主に百円玉を三枚渡し、袋に詰め込まれたわたあめを受け取った。
袋には、花火のイラストが描かれている。カラフルな色をしたものもあったが、真っ白なものを買う事にした。
私は人の流れに身を任せ、通りを歩く。見渡せば、恋人や家族連ればかりだ。
お盆になって、彼氏は実家に帰っている。お姉ちゃんが引きこもってからは、家族でお祭りにも行っていない。
友達がいないわけではないけれど、こういう時に誘える相手はいなかった。
窮屈な通りに比べて、茜色の空は開放的で清々しい。夕焼けの裏では、わたあめのような雲が陰っていた。
こんな気持ちになるのは、夕暮れのせいだ。
私は鳥居の下まで流される。
一匹の黒猫と目が合った。
ご愛読ありがとうございます。