20/25
懺悔と傍観の供え物
お盆。
鼻の奥に詰まるような、線香の匂いが立ち込めている。
一緒に帰省してきた幼馴染が、私の隣で兄貴の墓に向かって手を合わせている。この世の者とは思えない表情で、震えながら。
兄貴が死んでから、もう四年が経つ。
それは、夏の日だった。
私たちは川で遊んでいて、兄貴は足がつって溺れてしまった男を助けに行ったのだ。パニックになるそいつを落ち着かせ、浮き輪代わりのペットボトルを脇に挟ませた。
思い返すと誇らしい、冷静な姿だった。
けれど途中で、岩に頭をぶつけてしまった。脳震盪を起こした体は、流され、沈んでいく。
あたしは、眺めている事しかできなかった。
助けられた男は、それを一番近くで見ていた。苦しいなんて言葉では表せないのだろう。
だから彼は、震えながらも手を合わせ続けている。
そしてあたしは、また眺めているだけだ。
ご愛読ありがとうございます。