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看病
タイトルの通り。腐れ縁と片想い。
あたしはガスコンロの火を弱め、キッチンに備え付けてある棚を開けた。
真っ白な器を手に取る。隣にあった、色鮮やかな食器が目に止まった。今までになかった物だ。
器に茹で上がったうどんを移し、鍋に溶き卵を加える。ふわりと立ちこめる湯気からは、かつおだしの温かい香りがした。
ドアの向こうから、喉を削るような痛々しい男の咳が聞こえた。三十八度二分。最近できた彼女と初詣に行き、体調を崩したらしい。
それを聞いて来てみれば、食事もせずに寝たきりの状態。しかも、移したくないと言って、彼女に連絡もしないでだ。
馬鹿みたい。
音上げて煮立っている黒いつゆの中で、固まった卵が揺れている。あたしは火を止めて、うどんを入れた器に鍋の中身を注いだ。
本当に馬鹿みたい。
あたしとあいつは、ただの腐れ縁なのに。
ご愛読、ありがとうございました。