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Lonely summer non sea lover
海の日。男性同士の友情。
オレの前にいる男の顔は、新聞に隠されていて見えない。昼の学食は人の出入りも多いが、正面の男はずっと新聞を読んでいた。
色も落ちてきたし、染め直さなきゃな。
オレは目元まで伸びてきた前髪を指で弄る。
ふと、新聞の裏面に書かれているコラムが気になった。
『海の日と海開きは同じ日じゃなの!?』
こうして大学生になったのだ、やはり中途半端ではなく、存分に満喫したい。
「なあ、海行かないか? 今年」
男は新聞から顔を覗かせた。
「あー……海は、ちょっと」
「あ、お前山派?」
その時、男のスマホが震え出した。
男は「悪い。電話」と立ち上がる。空になった微糖の缶コーヒーを持って、ごみ箱の方へと歩いていった。
満喫するためには、彼女も必要か。
友の背を見つめながら、ため息を漏らした。
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