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日暮れの悪魔
姉妹の思い出。夏。
昼の太陽が世界を明るくして、夕方の太陽は世界を影で暗くする。そう言ったのは妹だ。私たちは小学生だった。
日中に散々輝いていた夏の太陽が沈み、ヒグラシが歌いだす。
「お姉ちゃん……」
妹はヒグラシが鳴き始めると、小さな体を震わせて、私の手を握った。
「悪魔がまた笑ってる……」
ヒグラシの甲高くも綺麗な鳴き声が、妹には悪魔の笑い声に聞こえていたらしい。
「大丈夫。お姉ちゃんが一緒にいるからね」
私は空いた手で、妹の頭を撫で続けた。双子なのに、歳の離れたお姉さん面をして。
姉として、ずっと頼られたかったのに。
早朝四時。進展のないイラストをぼんやりと眺め、ペンを置いた。早朝だが、一人きりの部屋は蒸している。
私は倒れるように、窓に近づく。
ガラスの向こうで、ヒグラシが鳴いていた。
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