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星のない七夕
七夕。病み系。
目の前にあるタブレット端末には、描きかけのイラストが映っている。ペンはずっと動いていない。
時計だけが動く。短針は三を指していた。
もう七月八日なのに、私はまだ七夕のイラストを描きあげられないでいる。
私は、重い腰を上げてトイレへと向かう。明かりは付けない。家の中は夜そのものだ。
リビングのテーブルには、小さな笹の葉が飾ってあった。
私はふらりと近づき、スマホのライトで家族の短冊を照らす。
『お姉ちゃんとまた仲良くなれますように』
部屋に戻った私は、スケッチブックを丁寧に切り取り、真っ白な短冊を作った。
ペンは止まることなく動く。
もう一度、リビングへと向かった。
『誰かが殺してくれますように』
久しぶりに家族と触れ合った気がした。
きっと、妹も喜ぶだろう。
ご愛読ありがとうございます。