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春情純情、三者三葉
新学期。微恋愛。友情。
ふぁっくしょん、という大きな声を出して、兄貴がくしゃみをする。
「今年も花粉症、つらそうですね」
マスクの下で鼻水をすする兄貴に、幼馴染の男が気遣いの言葉をかけた。
「あたしは花粉症じゃなくて良かったー」
「お前の分まで、先にもらっといたんだよ」兄貴の声は鼻声だった。「それで、高校はどうだ? 上手くやれそうか?」
「はい。こいつと同じクラスだった事以外は」
男はわざとらしくあたしを指差す。
「それ、あたしの台詞だから」
嫌味たらしい声と共に、風がざわざわと音を立てて、あたし達の間を駆けていく。
桜並木から、ピンクの雨がこぼれ散った。
散った花に染められる地面は、少し茶色が混ざっていて、あたしは好きじゃなかった。
ふぁっくしょん、という音がして、あたし達は三人で笑った。
――ずっと、このままならよかったのに。
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