エルフと眠る会
楽しんでいただけたらうれしいです!
コンクリート打ちっぱなしの広い部屋。白衣の女性がマイクを口元に近づけた。
「それでは皆さんご唱和ください。せーの、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
20人の声がぴったり揃う。21時ジャスト。ガラスケースの前には、20組の布団が扇形に敷かれ、その上に老若男女が正座している。
『おやすみなさい』
メッセージがモニターに表示される。ケースの中の金髪の美少女がにっこり笑って、真っ白な布団に入る。やがて寝息が聞こえ始めた。
波打つ長い金髪、陶器のような真っ白な肌。頬と唇には薔薇色がさし、金色のまつ毛が嘘のように長い。白い、レースがあしらわれたネグリジェが彼女の高貴さを引き立てている。美しい少女。
ただし、初対面の人は皆、彼女の耳を見た。
その、とがった耳を。
彼女はエルフ。名をフローレンスという。見た目は15〜17歳だが、実年齢遥かに上だと発表されていた。
「ああ、さすがエルフ……!寝顔まで美しい」
「しっ」
「私たちも寝ないと」
「おやすみ」「おやすみ」「良い夢を」
照明が最低限に落とされる。
白衣の女はケースのモニターを確認して静かにその場を離れた。
これは、不定期に行われている「エルフと眠る会」。参加者はエルフと同じ空間で眠ることで、彼女の夢を見ることができる。
物凄い倍率をくぐり抜けてチケットを手にした幸運な参加者たちは穏やかな寝息を立て始めた。
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