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黒影さんは眼が見えない  作者: 12.7mmのセミオート豆腐
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空飛ぶ海月、毒を持つ -2

 嵐の前の静けさは嵐の強さに比例する。彼はそう信じていたが今は違うかもしれない。

 第2話です。どうぞよろしくお願いします。

 設計に難ありとも言えそうな投下を経験してから大体17時間がたった。例のクラゲについては情報があまり集まらない。強いて言えば、夜になると浮かぶ少女が居ると言うヒントになりそうな情報のみ。

 1番高そうに見えたビルの屋上でナイフを器用に回しながら待機しているのだが、発見の知らせはまだ来ない。


「レイス。そっちはどうだ?かなり経ったと思うんだが」


 通信機の向こう側にいるであろう嫁に話かける。小さな咳払いが聞こえ、レイスの声が続いた。


『んーと、まぁメア君が喜ぶ様な情報をあげると、クラゲちゃんの名前はアングラ。女の子だね。浮遊と落下を愛する特殊癖持ち。なんと9歳、若いねー』


 やはりコントロールチームは俺より優秀だ。しっかりと礼を言って通信を切ろうとしたその時、レイスの声がまた届いた。


『メアくん!!98度回頭10m下方!魔力反応あり!多分目標だから回収して!』


「はいはい、98度で10mな!あー、Янашёлэто.(見つけた)


 その方向に向かって走りフェンスから覗き込む様にして下を見る。

 輝く夜景の中、アングラと言う海月の少女は噂通りユラユラとここよりも遥か上空に向かって登り続けている。だが、流石に俺が降りて回収すると安全とは言えないだろう。

 そう判断したナイトメアが自分の首筋に触れ、細い首の骨を鳴らすと、直径は3センチ位の真っ黒な触手が足元の影から伸びてきた。

 触手の名称は[Feeler 06]。俺の最高傑作の1つ。所有者の意思に従い行動する、戦闘型の触手。


「無傷で回収しろ。抵抗した場合、気絶させろ」


 いつものナイトメアとは考えられない位の有無を言わせない口調で触手に命令を下す。

 赤い刃をしまい音を立てずに伸びる触手を眺め、少女を回収する。…どうやら今は寝ている様だ。良かった。


「戻れ…はぁ、疲れた」


 唯一の欠点といえば作動中は常に触手の行動に演算分野を割り振り続けなければいけない事。まだまだ改良が必要だな。

 とは言えアングラを回収して仕事も終わりと言う訳でも無い。依頼人はクラゲを捕まえたら無傷で寄越せと言っていた。…引き渡すのは止めておこう。

 どうせ、ロクな事には使わなそうだ。それならば俺達が育てる方がよっぽど良い。


ーーーーーー


 レイスに色々と報告するとアングラの種族や性格なども分かった。思ったより俺達の側だった様だ。


「嬉しい様な悲しい様な…なんて言えばいいんだろうなコレは…」


『そうだね、ま、依頼人には搬送途中に頸椎の損傷により死亡した、とでも言っておくよ。それと、やっぱり“巣”は作っておくの?』


「作ってから帰ろうかね。なんか留意しとく事はあるか?」


 一度巣を作ろうとしてマフィアと警察に追いかけ回された事があってから、この辺りは聞いておいた方がいいかもしれない。

 アレは、思い出したく無い思い出の1つだ。


『それなら…っと。うん、ピースキーパーって言う武装した学生さん達の集まりがあるみたい。この島の平和維持の為に活動してて、メア君の今いる駅ビルの中で結構大規模な戦闘までした事もあるみたいだね。その時は入団試験?みたいなやつでそこにいたのが、えーっと、あれコレなんて読むの?送るから読んでー』


「全く…。あ?下の名前しかねえぞ?まあ良い。…1人目がテツ、次がヒイロ、えー次カレン。で最後が…トリスタン?全員学生か」


 耳に付けた通信機のデバイスに送られてきた画像データを見て名前を判別する。…レイスは古龍語は得意だが人間の言語は苦手だ。昔から変わらない。


『ありがとね、メア君。帰ってきたらたーっぷり、お礼させてね?…ゴホン、で、その子達が多分メア君の脅威になり…そう!うん、多分だけど!』


「ほぉう…面白そうだなぁ…?このテツは特に、俺と同じ硝煙の匂いがする…」


 我ながら変態だと思うが好奇心は抑えが効かない事も多い。戦闘狂?狂ってる?大いに肯定しよう。

 この写真を見る限りテツは、まだ俺みたいな狂気じみたヤツを相手にした経験は薄い…いや、俺みたいなのがこれ以上居てたまるか。


『メア君って本当そういう所あるよねー。好き。まぁ、手加減してあげてねー?まだまだ小さいんだから。あ、壊れちゃったらちょーだい。良いのが入ったから』


 レイスはレイスで何をするのか大体予想がついた。尋問によく似た拷問だろう。深追いするつもりは無いが気を付けておこう。アレはとてもと言っていいほど未成年にして良い物じゃ無い。


「じゃあ、もう少しそのテツ達について情報を貰おうじゃないか。レイス、頼めるか?」


『はいはいー!待ってたよ!その言葉!』


 時刻は午後8時。夜は始まったばかりで彼らの情報も多いだろう。ピースキーパー、均衡を保つ者達。テツ、ナイトメアと同じ硝煙の匂いがする人間の学生。

 興味が尽きない。明後日行こうか?襲撃は明日でも良いかもしれない。初めてデートに行く少年の気持ちがする。

 狂気的な好奇心を抱えたナイトメアの情報収集は加速していく。彼らについて知り尽くし、興味を無くす程にまで調べなければ。


「待っていろよぉ?テーツ君?」

 「空飛ぶ海月、毒を持つ」編はナイトメアの視点でお送り致します。

 次は頑張って手加減してね、ナイトメア。

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