空飛ぶ海月、毒を持つ -1
光の元には影ができるものです。まぁ、光が無くとも影はできますが。
彼らはその様な場所を生き抜いた者ですから。
夏の吹雪の騒動を解決してすぐに緊急の要請が入り、ナイトメアは渋々その要請に応じた。
…酒を呑んでから航空輸送機に乗るのはやめた方がいい。逆ならまだ良い。いくら操縦するのが精鋭隊直轄の[高高度爆撃隊]のエースといえども…な?揺れるんだ。
「うっ…なぁ、あと何時間横になってりゃ良いんだ?ボニートォ…」
「まぁまぁ、あと47分だけですよ。旦那。あ、そうだ。アルフォンシーノ、3番管に一応デコイ入れといて」
統率の取れた動きでデコイ…恐らくフレアを詰めたポッドを装填するのが見えた。しかし、あと45分か。武器の手入れでもしたくなってきたな。
俺がこれから行くのは人間達の住まう、元故郷。人間界の太平洋と呼ばれる海の真っ只中にある…何て名前の島だったか…。あれ?本当に思い出せない…。酒混じりの脳では難しいか。
「ボニート、行き先の島…だったか?の名前を確認したい。どんな所だ?」
「えーと、“特別指定教育都”だね。学校そのものが島の全てといってもいいぐらいの人工島だ。かなりデカい。俺達の“鯨”でも覆い尽くすのに80機は必要そうだな」
「ま、爆撃は俺が死んだら頼むわ。秘密保持というより証拠抹消でな」
そんな事を起こす予定は無いけど一応念の為に。それより、今回の要請の内容は「空飛ぶクラゲを捕まえてこい」と言う何とも投げやりな要請だった。
俺達、精鋭隊は戦闘行為と暗殺を得意とする集団なのにクラゲ探しとはなんとも舐められたものだ。
「探す事は確かに得意だ。けどよ、コレはスカベンジャーの方が得意だろうに…いや、あの子達は休みがあまり無い。うーん、やっぱりこっちに来るのか」
「旦那、そろそろですよ。投下される準備をして下さい」
窓の外を見ると夜明けが近い様だ。下は…海。島なんて見えない。
「ボニート、島は何処だ?何処にも見えねえんだが」
「旦那。この機体が何か知ってます?コレはジンベエザメです。そして旦那がコバンザメです。分かりました?」
「おい待て。俺は空は飛べても海は泳げねえぞ」
投下口のランプが赤色に光る。投下地点まで1Kmというサインだ。
「その時は魚になるか鳥になるかの2択です。オールグリーン。では旦那。投下をお楽しみください」
結果を言うと投下は成功。着地も成功した。だが、まさか海に落ちるすんでのところでポッドから弾き出されるとは思わなかった。
この島にナイトメアの興味をそそられる人物がいる事はまだナイトメアは知らなかった。
分かる人には分かる島。ナイトメアのクラゲ探しのついでに色々する話が始まります。