夏の吹雪と酒の為 -1
今回はちょっと短めです
ジルコニアにも四季は存在する。そして今は夏。素晴らしい事に今年は湿気も少ないし気温も例年と比べて3℃近く低い。だが、気になる事もある。北のペリカ皇国の方では夏だと言うのに雪が降ったそうだ。
この事態をいち早く知ったのは国王会議に参加していたナイトメアだった。
「吹雪…か。他にも何か季節外れな現象が?」
「ええ。ペリカ皇国はジルコニア龍王国に近い所を除いて全てが雪景色に包まれています。木は葉を落とし、動物も冬眠に入りましたが…冬眠に失敗した動物も見かけた、と言う話もあります」
「そうか…。それと、この場には年齢も近い者が多いのだから畏まらなくても良いのだぞ?アデュン皇帝。実際のところ俺もそんな感じだからな」
「では、次回の会議で私が話す番にそうさせてもらいます」
会議は暫く続いたが「解決は原因が何か分からない現状では難しい」という結論に至った。
「…つまり…ペリカの寒気がジルコニアにも来るかも知れず、今年はウイスキーはお預けになる…だと…?!」
「残念ながらな。俺だって信じられんよ。だからこそ原因を突き止める必要がある」
ジルコニアはウイスキーやウォッカといったアルコール度数の高い酒が名産品。それを支える小麦と果実は秋に実をつけるが、夏の暑さあってこその味というものがある。
別枠でバーを営むローグには人気のウイスキーが倉庫から姿を消す事に耐えられなかった様だ。
…可哀想に…。
かく言うナイトメアもウォッカは好物の一つ。それに輸出率の2割を占める酒類が全滅となれば、経済も傾く。経済が傾けば国も傾く。国が傾けば…
「考えたくもねぇな、そんな地獄は」
「ああ、酒の無いバーなんてのはただの箱だ」
「料理にも使うのに…主婦と酒呑みたちのデモが起きるぞぉ…コレぇ…」
片や酒が呑みたい、片や国と家族の為に。夏の吹雪の原因を突き止める為に。ローグとナイトメアはペリカ皇国の更に北、極限海と呼ばれる場所の調査へと赴いた。
今回出てきたペリカ皇国。ジルコニア龍王国の北にあって、毎年寒気はここから流れ込んでくる山と海に囲まれた陸の孤島。最低気温は-30℃まで下がった事もあるとか、無いとか。皇帝はアデュン•ペリカ。結構優秀な皇帝です。