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憧憬の眼差し④

 シャザーは渋っていたが、最終的には折れて冒険者三人組が行方不明になったと思われる地点の地図と、長方形のカードの形をしたオーパーツ『フォン』を渡してくれた。


「おお懐かしい、フォンですね」


「懐かしい?」


 バラカの反応に、シャザーは怪訝な表情を浮かべた。


「えーっと、バラカは昔からダンジョンに興味があって、外の世界の書物でオーパーツのことをいっぱい勉強したらしいんですよ」


 僕は透かさずフォローした。


「はい、ファハド様のおっしゃる通りです」


「ふーん。じゃあ、使い方は説明しなくてもわかるわね?」


 シャザーは一応納得してくれたようだ。


「遠征の時に何度か使っているところを見たので、多分大丈夫です」


「フォンの表面に指を三本以上当てると、周囲の音を拾って、同じ文様の描かれた別のフォンが音を発する仕組みになっているのですよね」


「うん、大丈夫そうね。遭難者を保護した場合や緊急時に連絡を入れること。あと、くれぐれも無茶はしないようにね」


「はい、わかっています」


 こうして、僕たちはアスワッドへ向けて出発した。


 ピラミッドの関税で書類に規定事項を記入し、アスワッドへ通じる石碑の前へとやって来た。


 石碑には逆さになった天使の姿が刻まれていた。この石碑の解釈にも諸説あるが、アスワッドは神の祝福を得られていないダンジョン、裏のダンジョンと呼ばれることが多かった。ちなみに、呪い装備の出土数もアスワッドが最も多かった。


 ちなみに、呪い装備の出土数もアスワッドが最も多いそうである。


「ここがアスワッドですか。黒という感じですね」


「ダンジョン毎にテーマカラーがあるなら、アスワッドは間違いなく黒だね」


 アスワッドの土・木・空は、アルスウルに比べて明度が下がった感じがした。


 ピラミッド前でアスワッドに初めて訪れた雰囲気を出していると、早速客引きに捉まった。


「そこの冒険者さん、今晩の宿はお決まりですか?」


 振り返ると睫毛の長いダークエルフの少女が居た。


 アスワッドでは、ダークエルフやシルフが人間と友好的な関係を築いている。


「あっと、宿は多分必要ないです」


 遭難者を救助したら、ダンジョン都市ガリグの冒険者ギルドまで連れていくことになるはずである。


「そうですか。機会がありましたら、冒険者の宿『ミルクチョコレート』にお立ち寄りください」


「はい、機会があれば」


 僕は使い慣れた社交辞令を口にした。


 ダークエルフの少女は間髪を容れずに声をかけていた。


「今のダークエルフの人、少しバラカに似ていたね」


「声をかけられた殿方が自然と白い歯を見せてしまう美貌と可憐さを兼ね備えている、という意味でしょうか」


「ははは……、そういうことにしておくよ。さて、ヤタラワーの森へは西のオベリスクから行くみたいだね」


 僕は地図を片手にいった。


「アスワッドへは初めて訪れましたが、アルスウルのオベリスクと微妙に色合いや形状が違うのですね」


 バラカはオベリスクをまじまじと観察しながらいった。


「んー、いわれてみれば違う気もするね。あんまり気にしたことないや」


 オベリスクはオベリスクとして利用していたので、そんな細かいところまで覚えていなかった。


「性能的には同じなので、特段気にする必要もないでしょう。きっと、このダンジョンを創造したファラオの気まぐれです」


「へぇ、そうなんだ。……え、ちょっと待って、バラカってダンジョンがどうやってできたか知ってるの?」


 今、バラカはさらっととんでもないことを口にしたような気がした。


「ファハド様たちはダンジョンがどのような場所か知らずに潜っていらしたのですか?」


「いや、ダンジョンがどうやってできたかなんて、聞いたこともないよ」


「んん? それは不可解ですね。まぁ、何か手違いがあったのでしょう」


 バラカは一人で納得すると、こほんと咳払いを挟んだ。


「それでは、説明させていただきます。ダンジョンとは、歴代ファラオが生まれ育った土地であり、勝ち取った世界であり、また眠る場所であります」


「その理屈でいくと、僕はダンジョン都市ガリグを支配して、ダンジョンを創造するってことになるのかな?」


「端的にいえばそうなります」


「でも、別に僕はダンジョンを作る気なんてないよ」


「結果として今の時代の人々がダンジョンと呼ぶだけで、石碑の世界は歴代のファラオが治めていた世界なのです」

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