閑話_ウタの情報収集
どうも、ウタです! 『基本的に、どこでも行く何でもやる』カイシロータの情報収集担当です。
ただいま「う・い・お・-・ん」改め「ユニコーン」の情報を集めるため、異世界生物研究施設に忍び込み中です。
今までもたくさんの情報を集めてきましたが、ユニコーンの名は聞いた覚えがありません。つまり、最重要機密レベルの情報。つまりつまり、一番ありそうなのは施設長のデスク一択!
厳しめの監視を潜り抜けて、鍵付き引き出し、分かりやすすぎ、ありがとうございまーす。失礼しまーす。
いくつかあるフォルダの中から「架空の生物」という文字を発見します。この施設長分かりやすくて好きかもしれない。
パラパラっとめくると「ユニコーン」の文字が目に飛び込んできました。そこにはたった一文だけ、「入口の作成?」と書かれています。
言葉の意味に首を傾げながら、とりあえず記憶しておいて、後の解読とかはカイに任せることにします。
そろそろ出るか、とフォルダを元に戻すと、ふと、一番奥の隙間に置いてあるカセットテープが目につきました。
自然にカセットテープへと伸びる自分の手に驚きながらも取ると、ラベルには「カイとの考察」と書いてあります。見つかることも厭わず、衝動的に再生していました。
――多分、彼ら異世界の生物は、望んでこちらの世界に来ているんだと思う。
――ああ、それは私もなんとなく思っていたよ。彼らは落ちてきた瞬間、ほぼ全員が一直線に何処かへ向かい、何か物事を始め出すのが確認されているからね。
――あと、出現する場所も決めて来ているんだと思う。
――……それは興味深い考察だな。根拠は?
――俺が故郷から出るまでその生物たちや穴の存在を知らなかったこと。いくら隠蔽していたとしても、流石に子供の口は止められないだろう? 俺は一回もそんな話を聞いたことは無い。誰もあんなおぞましい場所には落ちたくないんだろう。
しばらくテープが回る音だけが流れて、カイじゃない方のため息が聞こえました。
――……あり得る話だね。でも、この話は秘密にしておいた方がいいかもしれない。
――?
――世界の上層部が今のこの状況ですら好ましく思ってないんだよ。勝手に出口が開いて生物が降ってきて、こちら側からはあちらに干渉できない、この一方通行感が、ね。
――それって一方通行っていうより……。
――そう、それに気付かせちゃいけない。あちら側がこちらの世界を観察している、優位に立っている、なんて話を立証しちゃったら、異世界侵略なんて話も出かねない。
――まじか……。
――それに、君の故郷ってあの箱でしょ? 雅楽代家に喧嘩は売れないよね。
「誰かいるのー?」
カセットテープで聞いていた声が、別の方向から響いてきました。
慌てて再生を止め、そっと引き出しに鍵を掛け、相手の位置を感じ取りながら、慎重に研究施設を飛び出しました。
おぞましい、故郷、雅楽代家。
反芻してしまった言葉を頭から振り落とし、聞いた内容は全て記憶から消してしまって、さっさと次の依頼主の情報集めに移ります。
いつかカイが全てを話してくれることを願って、「入口の作成?」だけを記憶に残しました。