表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

少年は大航海へ旅立たない

少年は、大航海に旅立たない -4.995-

 


 僕は荷物を幾らか退かして、船底の入口を開けた。



 中を覗き込もうとしたところで、突然に僕は胸倉を掴まれて、船底に引きずり落とされた。




「いててててて……」


 頭を床に思い切りぶつけてしまい、痛さで悶える。




「ちょっと、約束と違うじゃない!私を隠してくれるんじゃなかったの!」




 うす暗い船底で、カナエさんは僕の胸倉を掴みながら、前後に激しく揺する。


 ああ、脳が揺れる。




「いや、あれはカナエさんが声出しちゃうのが悪いよ……」




「仕方ないじゃない!急にすごく揺れたんだもん!」




 子供の様に喚きたてるカナエさんであったが、その手は小刻みに震えていた。


 顔は引き攣っていて、先より余裕が感じられない。




「……仕方ないじゃない……」




 そう言って顔を伏せるカナエさんを見ていると、”マネージャーと、話し合ってみては?”なんて提案をするのが躊躇われた。



 事情は詳しく知らないが、カナエさんはあの強面のマネージャーを本気で怖がっているらしかった。




(確かに、あの人はタダモンじゃなさそうだしなぁ……)




 あの凄みのある声と顔は、堅気の人間とは思えない。


 昔何かヤクザ絡みなことをしていたのではないかと疑ってしまう。




(さて、どうしたものかな。カナエさん黙り込んじゃうし、連れてくるとはいったものの……)




 板挟みになってしまって身動きが取れないでいる僕。

 なんでこんなことに巻き込まれているんだろう……と自分が可哀想になってきた。




(今日は記念すべき初航海となるはずだったのに……)





 やがて、胸元の圧迫感は徐々に薄くなる。


 カナエさんは、消え入りそうな声でぽつぽつと話し始めた。



「私、駄目なんだ。怖いの、マネージャーのこと……」









 少年は、大航海に旅立たない -4.995- -終-

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ