35話「伝説のヒーロー」
「俺はアルファだ。オメガ、俺のこと忘れたのか?」
忘れたも何も、俺こいつのこと知らない…俺は知っている、こいつは強いぞ。こいつもお前が認める戦士ってやつか?…いや、それはないな。あっ、そう…まあいいや。
「行くぞ、志波!」
「ああ。」
アルファもEVアーマーになり応戦する。志波と二人で畳みかけるが、最小限の動作でこちらの攻撃をかわしてくる。余裕綽々って感じか、確かに強敵だな。荊の鞭をアルファの足首に引っ掛ける。
「おっと、転んじまったよ。」
その隙にNSロッドで磁力を叩き込む、はずだったが、志波の動きが止まっている。どうしたんだよ?
「お前…何をした…?」
「動きが鈍くなってないか?体全体に痺れが回ってきたか。」
体に痺れが?アルファめ、あんな力を持っていたとは…志波が掌底で吹っ飛ばされる。
「志波!」
「お前はEVだから痺れなかったか。まあいい、お前を消した後であの二人をじっくり始末しよう。」
アルファの掌底を思いっきり食らうが、何とか気合で持ちこたえて腕をとる。そのまま逆電流をぶつける。…効いてないのか?
「そんなちゃちな電撃じゃ痺れないぜ、オメガ。」
これ結構身を削ってるんだけどな…まあいい、そのために“荊の鞭”がある。足首に引っ掛けた鞭をアルファの体に這わせる。
「おお、なんだこれ、気持ち悪いな。」
呑気に言ってられるのも今のうちだぜ。絶縁体の鞭で相手の電力を弱らせることで、弱い電流でも致命傷を与えられる。
「これでも食らえ!」
出力の限界まで電流を流す。
「ぅあー…今のはちょっとだけ痺れたぞ。」
白煙の中からアルファが姿を現す。はあ…マジかよ…ピンピンしてやがる。
「悪あがきは済んだか?じゃ、そろそろ…」
「させるかぁ!」
志波!?動けないはずじゃ…志波がアルファの脇腹に思いっきりタックルを食らわせる。
「後で相手してやるから。もう少し寝てな!」
「が…この…程度…」
「無理するな、痺れが回って喋るのもキツいはずだぜ。」
あいつ…しかし我々にはこれ以上攻撃手段がないぞ。そうだな…
「イオちゃん、敦彦の様子は?」
「ダメ、まだ覚めそうにない。」
敦彦が起きるまで耐えられるか…?はっきり言って無理だな。アルファの攻撃を何とか凌ぐが考えが纏まらない。ああ、もう、どうすりゃいいんだよ。そのままアルファの蹴りで敦彦が転がっているところまで吹っ飛ばされる。
「大牟田さん…」
そんな心配そうな顔するなって。敦彦をしっかり見ててくれ、こいつは人類の希望だからな。そのとき敦彦の右腕のブレスレットが目に入る。サンダー・アーマーの起動装置…。
「ちょっと借りるぞ。」
敦彦の腕から起動装置を引っぺがして自分の腕に取り付け、手に持っていた電池をセットする。
「オメガ…何を…よせ…」
志波が途切れながらも静止する。心配してくれるのか。でもこの状況、俺がここでこいつを倒さなきゃ全員やられる。オメガ、ごめんな。構わん。…やはりお前は誇り高い。じゃあ、スイッチ押すぜ。
Thunder armor set up! Type_Voltaker!
久しぶりだな、ボルテッカー。
「伝説のヒーロー、ボルテッカーの復活だ!覚悟しろよアルファ!」
「サンダー・アーマーか。EVの身でそんなものを使えば確実に死ぬぞ。」
ああ、そうだ。サンダー・アーマー着用者には常に強力な逆電流が流れている。でも、お前を確実に仕留める一撃ぐらいは、撃つ余裕あるぜ。
Voltage max! 1,000,000V!
「悪いな、オメガ。最後の一撃と分かっていればわざわざ受けてやる必要はない。」
正論だな。でも外してたまるかよ。頼むから動かないでくれよ…
「な…体が動かん…何が起こって…」
これは…俺の願いが通じたってわけでもなさそうだな。へへっ、嬉しいな。
「僕が何も考えずに突っ込むかよ。ボルテッカーの最後の大舞台だ。…無粋なことすんなよ。」
「志波!」
「行けぇ!!幸平!!」
ああ、外さないよ。外すわけがない。
「ミリオンボルト…パンチ!!」
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
…勝った。でも俺ももう限界だ。オメガ、今までありがとな。礼を言うのは俺の方だ。
「幸…平…」
「志波、後は頼んだ。」
志波が黙って親指を立てる。最後に戻れたのかな、友達に…
「ああ…ガンマ…アルファ…オメガ…」
また仲間が消えてゆく音がする。なんでこんなことに…僕はただ…やはり戦うしかないのだろうか。
「お前がアダムか。」
とうとう来てしまった。…やっぱり僕は戦いたくない。
「少し話をしないか?」
「お前とする話はない。…さっさと戦え。」
35話「伝説のヒーロー」・完




