34話「最後のA」
志波さんから「アダムの現在地を特定できた」と連絡が入る。いよいよだ。もうこれ以上あいつらの好きにはさせない。
「杏さん、じゃあ行ってきます。」
「やばくなったらすぐ逃げなさいよ。」
「イオも一緒だし、そんな無茶はしませんよ。」
新品の電池を受け取ってラボを出る。キッチンへ行くと流さんが夕食の用意を始めていた。
「…行くのか。一口だけでも食っといたらどうだ。」
「良いですよ、帰ってからゆっくり食べるんで。」
「そうか、やばくなったらすぐ逃げろよ。」
さっきも同じこと言われましたよ。蜜絵さんはどこかな…
「敦彦くん今から出かけるの?」
自分の部屋にいたのか。蜜絵さんにも色々迷惑かけちゃったよな。完全に成り行きだけど、いてくれてよかった。
「うん、ちょっとね。すぐ戻ってくるから。」
「そ、気を付けてね!」
皆に挨拶を済ませて家を出る。家の前ではイオと志波さんと大牟田さんが待っていた。
「お待たせしました。…行きましょう!」
電池を起動装置にセットし、スイッチを押す。いつも通りのさわやかな電子音が鳴り響く。
Thunder armor set up! Type_Revolt , Mode:Revolution!!
志波さんに案内されて着いた場所は、蔦のビッシリ生えた古ぼけた洋館だった。ここにアダムが…。一歩足を踏み入れると、洋館の扉が開く。入って来いってことか?
「…埃っぽいな。」
大きな屋敷だが、人が住んでいる気配は全くない。空き家だったところに住み着いているのだろうか。
「レボルト…イブ…嗅ぎつけたのか。」
「ガンマ…。イブじゃない、イオ。」
「どちらでもいい。アダムのところには行かせない。」
立ちふさがるなら、倒すしかない。お兄ちゃん、気を付けて。あいつは…
「お前たちを倒すのは私じゃない。“潰しあえ。”」
あいつなんて言ったんだ?聞こえてなくていいから。
「オメガ、お前はここで倒す…」
「ちょっと、志波さん!急にどうしたんですか?」
志波さんと大牟田さん仲直りしたんじゃなかったのかよ。
「望むところだ!受けて立つ!」
「大牟田さんまで…二人ともどうしたんですか!」
…二人ともガンマに洗脳されてる。洗脳?
「レボルト…お前はかからなかったか。ならもう一度だ。」
お兄ちゃん、あいつの言葉に耳を貸しちゃダメ!分かってる、それより早く二人を止めないと。
「聞く耳はないのか。邪魔はさせない。」
止めに入ろうとするが、ガンマに邪魔される。先にこいつを倒さないと。こいつの話は聞かないように、聞かないように…
「おりゃあ!」
「どこを狙ってる?」
意識を逸らそうとすると、どうしても相手が見えなくなっちまう…。そうだ、イオ俺に話しかけてくれ。何でもいいから、話しかけ続けてくれ。…うん、分かった。頭の中にイオの声が響き始める。これで周りの雑音は聞こえないはずだ。
「ぐ…イブが何かしたか。」
話しかけ続けるのも結構大変、お兄ちゃんなるべく早くして…。あ、分かった。ヴィクトリー・コンダクターに電流を纏わせる。これで…
「イブ…“お前は引っ込んでろ”。」
「あ…」
レボルトの中からはじき出され、レボルトがスパークモードに戻る。今お兄ちゃんを一人にしたら…レボルトの中に入れない…してやられた。
「イオ、大丈夫。対策ならまだあるから。二人が正気に戻ったら俺を止めるように言ってくれ。」
「え、ちょっと…」
Warning! Short circuit.
対策ってまさかこれのこと?確かに自我をなくせば洗脳はされないけど…今のうちに二人をもとに戻さないと…
「あれ…何で志波と…」
「ちっ…あのEVの仕業か…」
戻った…お兄ちゃんは大丈夫だろうか。
「うぅぅう…」
うめき声を上げながら戦っている、今近づくのは危険そうだ。
「本来ならその姿で終わるはずだった…」
ガンマが攻撃を食らいながら恨めしそうにつぶやく。
Voltage max!! 1,000,000,000,000V!!
電子音がガンマに最期の時を告げ、レボルトが迷いなくヴィクトリー・コンダクターを振り下ろす。
「トリリオンボルトスラッシュ。」
「ア…ダム…」
ガンマが断末魔とともに消滅する。ガンマは最後までアダムのために戦ったけど…アダム、あなたは彼にお墓を建ててあげるの?…あ、そうだ、お兄ちゃん!
「大牟田さん、志波さん!」
「おう、任せろ!」
志波さんがNSロッドでレボルトの攻撃を受け止め磁力で拘束する。
「オメガ、今だ!」
身動きが取れなくなっている隙に、大牟田さんが鞭を伸ばしてレボルトから電池を奪い取る。うめき声が収まった、気絶はしたが正気に戻ったようだ。…無茶ばっかりして。
「ふいー、すごい迫力だったな。」
「ああ、全くだ。俺と戦う前に倒れてくれて良かったよ。」
奥から出てきた男が転がっている兄を蹴り飛ばす。あいつは…!
「おい、お前!何すんだ!イオちゃん、敦彦を頼む。」
お兄ちゃんをなるべく離れたところに運ぶ。あいつは、ずっと昔にベータ消されたはずじゃ…
「驚いてるな、イブ。デルタのアドバイスで身を隠していた。あいつへの恩もあるし、アダムに協力してやろうと思ってな。」
「お前も敵、ってことか。」
「お前じゃない、アルファだ。オメガ、俺のこと忘れちまったのかい?」
34話・完




