33話「勝利を導く者」
「何書いてるの?」
「…驚いたな。これはただの“日記”だよ。」
「あなたは、人間?」
「恐らくね。今のところは。」
「変なの。」
「やはり私を殺すのか?」
「ううん。私、彼らの計画に協力してないから。」
「それは…人類にとって希望だな。君さえ良ければ、彼らの計画を止めるのに協力してくれないか。」
「一応聞いてあげる。どうやって?」
「私の息子が“革命の力”を生み出してくれる。君がそれに力を貸してくれればきっと…」
「自分で作ればいいのに。」
「そうしたいのだが…私の脳はEVに侵され始めている。だから、次の世代に託すしかないんだ。」
「私にはよく分からない。家族とか、継承とか。」
「君が求めるなら、きっと分かるさ。君が“レボルト”を助けたいと思ってくれたらでいい。私の息子たちに、力を貸してあげてほしい。」
この記憶は…そうかイオ、お前が。博士、あなたの父親が託したものって、この力のことだったんだな。
「イブ!お前はもう私の知るイブではない!その人間ごと錆びつけ!」
シグマの怒声が飛ぶ。その通りだよシグマ、イオの心は人間で、俺の妹だ。
「でも錆びつくのは嫌だなあ…」
大丈夫、発電量上げるよ。
「…なぜ錆びない?イブ、お前の仕業か!」
「そう、私の発電量は無限だから。」
イオお前半端ないな…
「お兄ちゃん、攻撃は任せるよ。」
分かった!斧をシグマに向かって振り下ろす。
「この…こんなもの錆びで砕けば…」
そうはさせない。斧の方に電流を伝え錆を解かす。シグマはそのまま大地に叩きつけられる。
「斧って呼び方じゃなんかなぁ…もうソードでもないし…イオ、何かない?」
名前なら聞いてる。じゃあ聞かせてくれよ。
「“勝利を導く者”」
良い名前じゃん!勝とうぜ、一緒に!
「…うん!」
Voltage max!!! 1,000,000,000,000V!!!
出力上げすぎたかも…大丈夫?
「お前の力だ、大丈夫に決まってる。」
1兆Vの電圧で流した電流をヴィクトリー・コンダクターに纏わせ、水平に切り付ける。
「トリリオンボルトスラッシュ!!!」
…カッコ悪い掛け声。でもお兄ちゃんらしい。
「敦彦、やったな!」
シグマを倒したことで大牟田さんと志波さんの錆も解けたようだ。レボルトの外に出て“荷田イオ”の姿に戻る。
「大牟田さん、ありがとうございます。志波さんも!」
少し離れた所で志波さんが気まずそうに手を挙げて答える。お兄ちゃんが振り向いて手を差し出してくる。
「帰ろう。」
兄の手を掴んで黙ってうなずいた。
「それじゃあ、君はアダムと戦ったのか?」
戦ったと言っていいのかな…あれは。あいつの強さは他のEVとは段違いだった。
「戦いました。でも、全く歯が立ちませんでした。」
そして俺よりもずっと強かった。イオの力を借りれば勝てるのだろうか。うつむいていると志波さんが再び口を開く。
「イブ、お前は…」
「イオです。」
「いや、イブ…」
「イオです。」
「志波…イオちゃんって呼んでやれって…」
「ちっ…イオ、お前はアダムと言うやつについて何か知っているか?」
「私とアダムは、最初に生まれたEVです。ほかのEVは全てアダムが生んだ。」
他のEVを…?てことはアダムを倒せば新たなEVは生まれない?
「ゴールが見えたな。」
「でも、敦彦でも歯が立たなかったんだろ?」
うっ…そうなんだよ。全く相手にならなかったんだよ。でも、それでも何とかしなきゃ。
「私がお兄ちゃんと力を合わせれば平気です。アダムと同等の力を持ってるのは私だけだから。」
イオ…そうだな。俺達が力を合わせれば無敵だ。
「やりましょう。アダムを倒して、この戦いを終わらせるんです!」
「ああ!俺も力貸すぜ!」
「早速アダムの位置を調べる。…勝つぞ。」
人間とEVの運命が決まる戦いだ。絶対に勝つ。勝って、あいつらの支配を終わらせるんだ。
「ガンマ、それは本当かい?」
「ああ、この目で見たから間違いないよ。しかしイブの意思は変わっていないようだ。」
「…そうか。」
「気を落とすなよ。」
「ありがとう。でも仲間も随分減ってしまったね。」
「…そうだな。君さえ生きていれば死んだ仲間も蘇らせることができる。生きろよ。そうすれば僕たちの勝利だ。」
「うん…分かってるよ。」
33話・完




