26話「レボルト」
『こういうことが起きてしまった以上、私たち一人一人が対抗手段を持つことが必要だと思いますよ。例えばサンダー・アーマーを量産して各家庭に配備するなどですかね。』
あれ以来ニュースはこんな話題で持ちきりだ。敦彦君はもう3日も家に帰っていない。
探しに行きたいのはやまやまだが僕は動けない状態だ。なぜかというと、
交野教授!お話よろしいですか!
レボルトの開発者としてコメントをお願いします!
何か対策はお考えですか!
一足外に出れば文字通り身動き取れない状態にされてしまう。どこで何をしているんだ…
…なんか大変なことになってるな。レボルトは俺が認めた戦士の一人、このような扱いは納得いかない。それは俺も同じ気持ちだよ、ちょっと考えがあるんだけど。でも今は直也も身動き取れない状態だしな。あいつに頼んでみるか。彼は俺達を嫌っているのではないのか?今はそんなこと言ってられないだろ。
「もしもし、志波か?ちょっと頼みたいことがあるんだが…」
「小癪だが僕も同じことを考えていた。君にしかできないことだ。」
「イオ…何でここに…」
「何でもない。帰ろう?」
そう言ってイオが手を差し出してくる。俺はあの時、その手を握れなかった。怖かった。傷つけてしまうんじゃないか、と。結局逃げ出すようにその場を立ち去ってしまった。当所もなく街を歩く。すれ違う人たちがみんな自分を避けているような、そんな錯覚を覚えてしまう。世間に見放されても、なんて大見得きったけど想像以上にきついなこれ。人のいないところへ行きたい、とにかく一人になれる場所。そう考えながら駆けているといつの間にか見たことのない山奥にたどり着いていた。これっていわゆる遭難では?いや大袈裟か、街も見えるし。…これからどうしよう。
「だからですね、俺はEVなんですよ。」
「はぁ…ですからアポイントがございませんと…」
「オメガ、もういい。これ以上恥を重ねるな。」
オメガの肩を掴んで新聞社を後にする。考えがあるというから何か当てがあるのかと思ったがまさか完全な無策とは…
「ダメだったか。よし、次行くぞ!」
こいつまさか手当たり次第にマスコミを訪ねていくつもりか?
「でも全然入れてもらえなかったな。やっぱりEVへの不安が高まってるのか…」
「良いことを教えてあげよう。お前は恐れられているわけじゃない、頭のおかしい奴と思われているんだ。突然訪ねて話を聞いてもらえるとでも?」
「でも大スクープだぜ?どこの会社も真っ先に抑えたいはず…」
…そもそもお前の話を信じてもらえてないんだよ。これからどうするんだ一体。
「オメガと…コンパス・志波日指だな。」
「…何だお前?」
こんな時にEVか、まったく不愉快な連中だな。
「レボルトの精神を徹底的に追い込めって言われてるんでな。まず仲間のお前たちを消させてもらう。」
「そういうことならやられるわけにいかないな!なっ、志波!」
「馴れ馴れしく話しかけるな、言われるまでもない。」
「あっー!こんなところにいた!」
息を切らしながらやってきたのは蜜絵さんだった。こんなところにいたのによく見つけたな。
「帰ろうよ、みんな心配してるよ?」
心配させて悪いとは思ってる…でも帰れない。俺なんかと一緒にいたらみんなまで変な目で見られるんじゃないか…そう思うと…
「ほほう、そういうつもりなら私にも考えがあります。」
押し黙っていると、そういって俺の隣に座りこむ。
「帰るって言うまで私もここにいるから。」
「今日は冷えるから帰った方が…」
「そっくりそのままお返しします。」
困ったことになったな。この人はこうなったら何時間でもこうしてるぞ。
「…イオちゃん、放っておいていいの?」
あの時、イオに向けてしまった拳。イオのおびえた目。かすかに聞こえたイオの震え声。一歩間違えたら取り返しのつかないことになっていた。それだけじゃない、博士を、俺たち兄妹の居場所になってくれた人をあんな目に…どんな顔して帰ればいいんだよ。
「これ以上イオちゃんに寂しい思いさせるなら私の妹にしちゃうから。」
「いや、それはできない…」
「そんなこと言ってもダメ。するったらするんだから!」
もはや言っていることが意味不明だ。思い詰めてたはずなのに笑ってしまいそうになる。
「あ、そうだ。バイト先の店長さんから電話来てたよ、すっごく怒ってた!」
店長が…そりゃそうだよな、レボルトのあんな姿見たらな。
「無断欠勤とは何事だ!って。…来づらいのは分かるけど俺は味方だ、って。」
店長がそんなこと…
「ねえ敦彦くん。私たち以外にも味方になってくれる人きっといるよ。だからもっと頼ろうよ。」
俺の味方になってくれる人…なんだ、いっぱいいるじゃん。これだけいれば十分だよ。世間に見放されたとか悩んでたのがバカみたいだ。
「…ありがと。俺、帰るよ。」
「本当!?はぁー、よかったぁ…」
「でも、先帰ってて。ちょっと寄るところあるから。」
「え?…OK!楽しみに待ってるからね!」
さっき街のほうで見えた煙。どうしても行かなくちゃいけない。そして無事に帰るんだ。
このEVしぶといな。さっきから着実にダメージは与えているが一向に倒れない。どうやら時間経過とともに傷が回復しているようだ。コンパスは燃費が良くないし、オメガは身を削りながら戦っている。長引くほどこちらが不利になる。向こうの傷が回復する前に一気に蹴りをつけたい所だが…
「俺もお前もじわじわ攻めるタイプだもんなぁ…あいつ相性悪いぜ。」
お前に言われずともわかっている。だからこうして打開策を探しているんだ。こんな相手にこそレボルトが必要なんだが…
「お前たちでは私に勝てないと早く悟るべきだ。」
それはお前が決めることじゃないんだよ。背に腹は代えられない、ここで一気に蹴りを付ける。NSロッドの磁力を発生させる。オメガも僕の動きを察して荊の鞭を取り出す。
「…これで終わりだ。」
僕とオメガの同時攻撃が命中する。これで死んでくれないと泣くぞ、僕は。
「ぐ…がはっ…効いたぞ、今のは。」
はぁ、本当に泣きそうだ。もう傷が治り始めてる。このままでは電池切れまで粘られてじわじわ嬲り殺されるだけだ。オメガも同じか。万事休すだな、どうしたものか。
「敗北を悟ったか?ならばそのまま死ね。」
その時目の前を一粒の閃光が駆け抜けた。…まったく来るのが遅い。
「大牟田さん、志波さん!ご心配かけてすみません!」
「敦彦ぉ!元気そうじゃねぇか、この野郎!」
「そう思うならもう少し早く来てくれないかな。」
「本当にすみません。でももう大丈夫です。…やばくなったら止めて下さいね。頼りにしてますから!」
いいよ、思う存分やればいいさ。ていうか早くそいつ倒して…
「荷田君!そいつは傷を受けてもすぐに回復する、一撃で仕留めろ!」
「了解です!」
レボルトの拳が激しく火花を散らす。
Voltage max! 1000000V!
「ミリオンボルトパンチ!!」
本当に一撃で片付けてくれるとはな。やれやれ、これで一件落着か。レボルト復活だな。
「じゃあ、俺、家に帰ります!」
26話・完




