21話「最低な奴」
「イオー、…あれ、いないのかな。」
おかしいな今日は土曜日だから学校休みのはずだけど。俺も今日バイト無いからどこか連れていってあげようと思ったんだけど。
「あ、流さん。イオ見てない?」
「ああ、蜜絵さんに引っ張られて行ったよ。ショッピングだってさ。」
蜜絵さんと出かけてたのか、先を越されたな。まあ、蜜絵さんと一緒なら安心か。
「心配か?イオちゃんがかわいいんだな。ほれ、朝飯。」
「あざっす。そりゃ可愛いですよ、たった一人の妹ですから。イオは、それはもう難産で、幼い頃も病弱で…」
「はいはい、その話は何回も聞いたよ。元気にいてくれるだけで嬉しい、だよな?」
「…はい。」
イオと蜜絵さん、楽しんでるかな。
「ねえ、イオちゃん。次はどこ行く?」
「うーん…」
うーん、反応良くないなあ。元気なさそうだったから楽しんでもらえればと思ったんだけど、やっぱり無理に連れ出すのはよくなかったかな。いや、弱気になっちゃダメ!
「あ!あそこのお洋服屋さん行こうよ!」
なんとしても楽しんでもらわなくちゃ!
「イオちゃん、こういうの似合うんじゃない?」
「あ…かわいい…」
「よし!じゃあ試着してみよう!すみませーん、試着良いですか?」
店員さんに試着室に案内してもらう。かわいい服が嫌いな女の子なんていないもんね!イオちゃんも自然と楽しくなってくるはず!
「じゃあ着れたらカーテン開けてね!」
「うん。」
あの服イオちゃんが来たらかわいいだろうなあ、楽しみだなあ。…はっ、私ばっかり楽しんでどうするんだ。今日はイオちゃんに楽しんでもらうために…全く仕方のない奴ね。
…イオちゃん遅いなあ。そんなに時間かかるような服じゃないと思うんだけど。ちょっと様子見てみよう。
「イオちゃん、だいじょう…えっ!?」
カーテンの中をのぞくとイオちゃんがいなくなっていた。何で?ずっとここにいたから外に出たら気付くはずなのに。どうしよう、何これ、神隠し?と、とにかく早く探さないと。
「あのっ、すみません!私と一緒にいた女の子店から出ていってませんか!?」
「いえ…見ておりませんが…」
どこ行っちゃったの?あ、そうだ!電話!電話してみよう。
…おかけになった電話は、現在電波の通じないところにいるか、電源が入っていないため、かかりません。…
電話も通じない!もうどうしよぉ!?
蜜絵さんから電話だ。どうしたんだろう。帰りの電車賃まで使っちゃったのかな。
「もしもし敦彦くん!?大変なの、イオちゃんがいなくなっちゃったの!!」
な…!イオが!?
「わ、分かった!俺も探してみるから、どの辺で遊んでた!?」
イオ…どこ行ったんだよ…!
蜜絵さんと駅前で待ち合わせた後二手に分かれて捜索を開始する。イオの行きそうな場所…あいつ人混みとか苦手だからな。人気のないところで休んでるのかも。この辺りの人気のなさそうな場所を片っ端から駆け回る。だがそれでも見つからない。
「やあ、レボルト。どうしたの?そんなに息切らしちゃって。」
「カイ…悪いけど、今は話してる場合じゃないんだ。」
「待って!僕に何か手伝えないか?困ってるんだろ?」
カイ、お前…やっぱり良いやつだな…
「実は妹が消えちまったんだよ。それで今探してるんだ。」
「分かった。妹さんの特徴を教えてくれ。」
カイにイオの特徴を教えた後分かれて捜索を再開する。蜜絵さんの方もまだ見つけられていないようだ。頼む、無事でいてくれ…。
「イオちゃん、いない…」
今日行ったところを順番に探してみるがどこにも見当たらない。本当に神隠しにでもあっちゃったのかな…
「やあ、お嬢さん。お困りのようだね?」
急に知らない人から声を掛けられる。なんなのこんな時に…
「すみません、今急いでいるので…」
そう言って逃げようとするが、髪の毛を掴まれぐいと顔を引き寄せられる。
「お目当ての物の場所を教えてやるって言ってるんだよ。今すぐ荷田敦彦に連絡しな。」
「な、なんなのあなた…」
私のスマホの電話が一人でに起動する。もう、何が起こってるの…
「いいか、僕の指示通り話せよ。町外れの廃工場で荷田イオを見つけた、そう言うんだ。」
ごめん、敦彦くん私自分の命が惜しいです…醜い人間でごめんなさい…
「あ、敦彦くん?イオちゃん見つかったよ…うん、町外れの廃工場…」
「はい、よく言えました~。じゃあ、行こっか。」
「うぅ…はい…」
ああもう泣きそう。ただイオちゃんとショッピングがしたかっただけなのに…
蜜絵さんから連絡を受け町外れの廃工場に向かう。
「イオ!!無事か!?」
「あ…敦彦くん…」
「蜜絵さん、イオは!?」
「…あそこ。」
蜜絵さんが指さす方に目を向けると、イオが椅子に縛り付けられていた。
「イオ!一体誰がこんな事…」
「僕だよ、レボルト。僕がさらってここに閉じ込めたんだ。」
そう言いながら奥から出てきたのは…こいつ…!
「カイ…お前…最低な奴だな…!!」
21話・完




