20話「科学の進化・生命の歴史」
「面白い子だな!もう少し話そうか、科学の進化と生命の歴史について。」
デルタはそう言いつつ再び距離を詰めてくる。
「生き残ればその分私と会話できるぞ!頑張ってくれ!」
なんだよそれは。元々やられるつもりもないが。
「君は生命の進化についてどう考える?私はね、進化とは不可逆なものであると考えているんだよ。」
悪いがそんな議論に付き合うつもりはない。エレクトリガーの引き金を引く。
「おっと、つれないねえ。ま、いいや。君たち人類は科学のない時代に戻れるかい?文明がごっそり消し飛ぶレベルの厄災でも起きない限りは、恐らく無理だろうね。そういう意味ではある意味、科学の発展も不可逆なものだと言えるかも知れない。」
「科学の発展も人類の進化の一部だ、とでも言いたいのか?」
「その通り!でも生命の進化とはもっと長い時間をかけて起こるものだ。進化、と言うには科学の発展はあまりにハイペースだと思わないか?」
何が言いたいんだ。結局どっちなんだよ。
「だが“人類ではない別の存在”が進化に力を貸していた、とすればどうだろう?」
「それがお前たち、EVだってことか?」
「勘がよくて助かる!科学史にパラダイムシフトを起こした天才はすべて、EVに感染し操られていたんだよ。君の父親のようにね!」
まさか…おい、嘘だろ。
「残念ながらそのまさかだ。地球生命の進化は、EVアーマー再現と電力の安定生産が実現できる生物を生み出すために誘導された結果だ。人間が生まれた後は簡単だった。優秀な人材を適当に見繕ってちょっと力を貸してあげるだけでよかったからね。」
「何が力を貸すだ!殺して操っていただけだろうが!」
「そういう身も蓋もない言い方はやめてくれよ。彼らの才能を存分に生かせる研究課題を与えてあげただけさ。」
バカげてる…自由に使える肉体を手に入れるためだけにこんな気の遠くなるような計画を実行していたというのか。人類はこいつらの器になるために作られた存在だというのか。そんなことさせるものか。
「そして君たち人類は見事に実現してくれた!あとはレボルトの覚醒が済めば私たちの計画は最終段階に入る!」
「レボルトの覚醒…?どういうことだ!」
「いくら私のかわいい息子が相手でも、さすがにそこまでは話せないな。あ、私じゃなくて器の、だったか!」
「デルタぁああああ!!エレクトリガー、フルチャージ!」
「名残惜しいが時間切れだ。今日のところは帰らせてもらうよ。」
そういってデルタは姿を消し、エレクトリガーが放った弾丸は虚しく宙を舞った。
「お帰り、デルタ。どうだった?」
「おお、喜べアダム!量産型アーマーの開発に成功していたようだよ。あとは設計図を手に入れて量産すればまた計画の完成に一歩近づく!」
「デルタ、それは結構なことだが。お前少し喋りすぎじゃないか?勝手にペラペラと…」
「ガンマ、君は相変わらず頭が固いねぇ。聞いたところで何もできやしないさ。それに、私より勝手な連中がいるだろう?」
「オメガ達のことだね…今頃どこで何をしているのか…心配だな。」
「ふっはははは!やはりお前は誇り高い戦士だ!いいだろう、お前に感染してやる!」
感染って…俺ロボットじゃないよ、オメガ。その瞬間背後から何者かが俺の心臓を貫いた。あれ…俺死んだの?
「貴様!どういうつもりだ、俺とこいつの1対1の勝負を汚すつもりか!」
「いやいや、いつもは廃鬼にやらせてばっかりだからさ。自分でも人を殺す感覚っての知っておこうと思ってさ。」
おかしいな、死んだはずなのにどうしてこいつらの会話が聞こえるんだ?そっか、これ夢だ。
「それより、いいの?彼のこと放っといて。」
「お前…」
俺の死体に何かが入り込んでくる、これひょっとしてオメガか?あ、体動く。でも制御効かない。
「待っていろ、大牟田幸平…お前の誇り高き心は俺が必ず取り戻してやる…」
………朝か。この夢は、俺が死んだときの…。遠隔操作で部屋の明かりとテレビのスイッチを付ける。最初は戸惑ったけどこの体も案外便利なんだよな。電力さえ補給できれば食事も必要ないし。今日は夕方から雨なのか。傘持っていかないと。
夕方、アルバイトを終えて帰路につく。戸籍上死んだことになってるから定職につけないんだよなあ。今は日雇いのアルバイトを転々とする日々だ。EVがいつ出て来るかもわからないからちょうどいいのかもな。ちょっとスーパーでなんか買っていくか。食事は必要ではないがやっぱり何か食べないと落ち着かない。
「あれ?大牟田さんじゃないですか。」
スーパーの店員に声をかけられる。敦彦のバイト先ってここだったのか。
「ああ、ちょっと食料買いにな。」
「そうなんですか。あ、今日サンマ安いですよ!」
「お、良いこと聞いた。ありがとうな。今日何時まで?」
「今日閉店までなんすよー。」
「そっか、もうすぐ上がるんなら待ってようと思ったんだけど。頑張れよ。」
あんまり邪魔したら悪いし、軽い会話で切り上げる。あいつも頑張ってんだな。適当に買い物を済ませて店を出る。店の軒先で女の子が雨宿りをしていた。あの子確か敦彦の妹の…
「イオちゃん?」
こちらを見て軽く会釈する。気のせいかもしれないけど、なんか警戒されてんだよなあ。
「どうしたの?」
「…お兄ちゃん待ってる。」
「そっか、いつも一緒に帰ってるの?」
「…傘忘れたから。」
「敦彦には言ってるの?」
「…邪魔したら悪いし。」
敦彦今日閉店までって言ってたけど、聞いてないのかな?…しょうがないなあ。
「イオちゃんごめん、ちょっと荷物見ててもらっていい?」
荷物を預けてもう一度店内に戻る。ビニール傘は、と…有った有った。ビニール傘を購入し再び店を出る。
「はい、これ。」
持ってきた傘をイオちゃんに渡す。
「…いいの?」
「うん、これあるから。」
さっき買ったビニール傘を見せる。
「…ありがとう。」
「いいから、いいから。」
傘を渡そうとすると手が触れてしまう。触れた手から静電気が発生する。この感覚…
「イオちゃん、君はまさか…」
「!皆には言わないで…」
「え、ああ、うん…分かってるよ…」
マジかよ…そんな…イオちゃんがEVだったなんて…
20話・完




