19話「アンピアー」
ラボのアラートが鳴り響く。EVが出現したようだ。さっそく敦彦君に連絡を…
「いつまで他人に戦わせてるんだよ。三人の誓いを忘れたのか?」
志波の言葉が脳内をよぎる。僕は…
「杏さん、ここは頼んだ!」
量産型アーマーを掴んでラボを飛び出す。忘れるはずがない。忘れられるはずが。それに父さんにも託されたしな。志波、幸平、僕も戦う。
Thunder armor set up! Type_Ampere
「そこまでだ!」
「なんだ、レボルトじゃないのか。君はどこかで会ったかな?ま、いいや。お初にお目にかかる、私はデルタだ。」
「え?僕はアンピアーだ…」
なんだよこいつ、調子狂うな…まあいい、とにかく早くこいつを倒さなければ。
「エレクトリガー!」
腕部の装甲が変形して銃になる。アンピアーでは、誰でも簡単に扱えるよう音声認識システムを使用している。エレクトリガーの弾丸は着弾と同時に対象に強力な電流を流すことができる。小手調べに3発弾丸を打ち込む。
「おっ、それはもしかして量産型のアーマーかな?完成していたんだね、私は嬉しいよ!」
軽口をたたきながらひらりと交わされる。
「射撃は不得手かな?もう少し近づいたほうがいいんじゃないか?…例えばこれぐらい!」
そういうと一気に距離を詰めてきた。まずい!
「装甲の厚さはどれほどかな?」
ハイキックをもろに頭に食らってしまう。何とか体勢を立て直して反撃を試みるもあっさり受け止められてしまう。
「うーん、性能はあまり良くないみたいだね。ま、その方が支配しやすいか。」
支配って…父さんの遺文にもそんなことを書いていたな…
「それの開発を成功したご褒美に教えてあげよう。私達はサンダー・アーマーを通じて人間の肉体を乗っ取るつもりなんだ。そのために誰でも使える量産型が必要なんだ。」
なんだと、それじゃあ僕がサンダー・アーマーを開発したことも全部こいつらの掌の上だったというのか…
「それでも僕は、父さんの思いのため、友との約束のため、そして人類を守るために戦う!」
デルタの腕を掴み、至近距離から弾丸を3発撃ち込む。
「おおっ、低性能の割にはやるじゃないか!今のは結構痛かった!」
すかさず弾丸を装填しもう一発撃ち込む。
「なぁんだよ、君結構戦えてるじゃない!それ本当に量産型?」
「サンダー・アーマーのことは僕が一番よく知っている!僕が使って弱いわけがないだろ!」
流れがこっちに向いてきた、このまま押し切る!
「エレクトリガー、フルチャージ!」
「それは食らうとまずそうだね!」
その瞬間、アンピアーの通信装置から爆音のノイズが鳴り響く。ぐっ…何だこれは!?
「危ない、危ない。このあたりの電波をジャックさせてもらったよ。僕の能力でね。」
まだこんな力を隠していたとは…迂闊だった。
「ああ!思い出したよ!君、あの科学者の息子さんだ。通りで会ったことある気がしたんだよぉ。」
こいつ、父さんのことを知っているのか?デルタが後ろに飛んで距離をとる。
「面白いものを見せてあげよう。」
デルタはそういうとEVアーマーを解除した。こいつ何のつもり…
「あ…父さん…?」
「理解が追い付いていないようだね。私の宿主は、君の父親なんだよ。」
こいつが…父さんに…?
「君の聞きたいことは大体わかる。ちゃんと教えてあげるから安心して。えーと、どこから話そうかな。じゃあまず私と彼の馴れ初めから聞いてもらおうかな。」
馴れ初め、だと。ふざけやがって…
「彼と出会ったのは15年前だ。彼は素晴らしい才能を持っていたからね。サンダー・アーマーを開発させるために殺して感染した。あっ、もう終わっちゃった!いやあ、でも彼は手強かったよ。普通はEVに感染されたら自我なんかすぐに失くしちゃうんだけど、彼しつこくてさぁ。最近になってようやく完全に抑え込めたんだよ。」
ふざけるなよ、そんな理由で父さんを…
「一時はどうなるかと思ったけど、君がしっかり受け継いでくれてたんだね。良かった、良かった。嬉しいよ私は。」
こいつ…その顔でそんなこと言われたら、父さんじゃないって分かってても…
…だがこうしなければ“彼ら”に勘付かれてしまう。…
あいつが今話したことが本当なら、デルタは最近まで父さんの自我を抑えきれていなかった…なら、あのメッセージは紛れもなく本物だ。
「…感謝するよ、デルタ。これで確信が深まった。」
「面白い子だな!あまりしゃべりすぎるとアダム達に怒られるが…ま、いいや。もう少し話してあげよう。科学の進化と生命の歴史について。」
19話・完




