2話「交野家の食卓」
人物紹介回なので戦闘有りません。
レボルトがふーっと息をつくと、そこにはさっきの少年が立っていた。ホントに彼がレボルトなんだ……目を丸くして見つめていると彼が歩み寄ってくる。
「よし、じゃあ行こうか。」
そういうといきなり私をお姫様抱っこで抱き上げる。えっ、何なの!? 怖いんだけど!
「あのっ!行くって一体どこに……」
「ケガしてるじゃん。手当てしないと。」
あ、そういうことね。一瞬でも疑ってしまってごめんなさい。彼は私を抱えたままスタスタ歩きだす。
「あ、俺は荷田敦彦。よろしくね」
「! 私は布藤蜜絵って言います……」
「敬語じゃなくていいよ」
「あ、うん……」
そんな感じでぎこちない会話をしながら(ぎこちないのは私だけかもしれないが)、彼が居候しているという家まで運ばれていった。
ヒーローが居候している家ってどんなだろうとか考えていると、明らかに異彩を放つドーム型の建物が目に飛び込んできた。
あれ漫画とかに出てくる怪しい研究所まんまじゃん! まさかあそこじゃないよね? しかし荷田君はその研究所風建物の前で立ち止まり、「着いたよ」と。まあそうだよね……お邪魔しまーす……
……怪しい外観の割に中は案外普通の家だった。何か疑ってばっかりでごめん……
心の中で謝罪していると奥から一人の男性が出てきた。メガネかけてて白衣で髪ボサボサでいかにも博士って感じの。
「おかえり、敦彦君。その子は?」
「博士ただいま!布藤蜜絵さん、現場で怪我して動けなくなってたから連れてきたんだ」
「相変わらず優しいねえ、敦彦君は。僕は交野だ。部屋が一つ余ってるからそこで休むといい。敦彦君、連れてってあげて」
交野博士に促され、私を空き部屋に運んで手当てまでしてくれた。本当に何から何までありがとうございます。
「交野博士、良い人そうだね」
私が語り掛けると荷田君は嬉しそうに
「うん、博士は本当に立派な人なんだよ」
と答えた。仲がいいんだなあ、まるで本物の兄弟みたい。
「この家には荷田君と博士で住んでるの?」
「ううん、他に博士の助手の流さんと杏さんと、あと俺の妹のイオも一緒だよ。」
想像以上の大所帯だ。賑やかで楽しいんだろうなあ。なんて考えてると荷田君が
「あっそうだ!晩御飯も一緒に食べてきなよ。流さんの料理おいしいんだぜ」
と提案した。魅力的な誘いだがこれ以上お世話になって迷惑じゃないだろうか。そう迷っていると、荷田君は勘違いしたのか
「あー、でもご両親も心配しているかな……」
とつぶやいた。荷田君、私の両親は……
「そうじゃないの、私の両親、亡くなったの、廃鬼に襲われて」
すると荷田君は「俺達と同じか……」そうつぶやいた。俺たちと同じって……そして次の瞬間部屋の扉が勢いよく開いた。
「なら君もここで一緒に暮らせばいいじゃないか!」
交野教授? いつからそこに? ていうかずっと聞き耳立ててたんですか? 一緒に暮らすって? 私が混乱していると荷田君が口を開いた。
「それいい!イオも喜ぶよ。ね、どう? 布藤さん」
かくして私はこの研究所風家屋の新たな居候となったのでありました。
「ただいま。……どなた?」
私が去年まで通ってた高校の制服だ。てことはこの子がイオちゃん。
「はじめまして、実はかくかくしかじかで……」
軽く事情を説明するとイオちゃんは顔色一つ変えず、
「なるほど、よろしくお願いします」
と。荷田君曰く喜んでる顔らしいが私にはわからない。……頑張って分かるようにならないと。
「ただいま戻りましたーっ!」
「調査終了しました…。」
元気溌剌な女性と満身創痍な男性が戻ってくる。さっきと同じように説明する。
「私は井田杏、こっちは弟の流。よろしくね」
「よろしくお願いします」
こちらの二人は優しい笑顔で迎え入れてくれた。二人は姉弟だったのか。
「流さん! 今日は布藤さんの歓迎会だから豪華に頼むよ!」
「また俺が食事当番かよ。もう4日連続だぞ……」
「まあまあそう言わずに! 流さんの料理が一番うまいんだもん」
「そ、そうか? そこまで言うなら……」
荷田君と流さんの会話が聞こえてくる。流さんパッと見クールそうなのに……
「今日はサプライズパーティーしてあげるから楽しみにしててね」
杏さん気持ちは嬉しいですがそれサプライズじゃないです。
「…というわけで今日からこちらでお世話になります、布藤蜜絵です。よ、よろしくお願いします」
と緊張しながら軽く挨拶を済ませ、流さんの作った晩御飯を頂いた。いろいろ不安はあるけど、今は一人ではないというのが嬉しくて仕方なかった。こんな賑やかな食事いつぶりだろう。自然と笑顔が溢れ出していた。
「……おいしい」
2話・完