14話「帰ってくる場所」
靴が二人分多い。お客さんかな。リビングでくつろいでいた流さんに「誰か来てるの?」と聞いてみる。
「お帰り、イオちゃん。大牟田さんと志波さん…交野教授の昔からの友達だよ。さっきから何か話し込んでるみたい。」
博士の友達が。それより流さん、ちょっと元気なさそうだけど疲れているのだろうか。「今日の晩御飯私が作るよ。」と提案するが、
「いやいや!いいから部屋で休んでててよ、学校疲れたでしょ?このぐらいさせてよ。」
と止められてしまう。本当に様子がおかしい。普段ならもっと喜んでくれるのに。
「で?イオちゃんにまで心配かけてどういうつもり?」
夕飯のあと姉さんに呼び出されたから何事かと思ったが、見透かされていたか。こういうとこだけ鋭いんだよなあ。
「いや…なんか俺、あんまり敦彦の役に立ててないなあ、と思ってさ。」
技術面でのサポートは交野教授と姉さんがいれば十分だしこの前敦彦が落ち込んでた時も俺があたふたしている間に何やら解決していた。交野教授の助手として、レボルトのサポート役としてここにいるつもりだったが、何の役にも立っていない俺がここにいていいのか、そんなことばかり考えてしまう。
「何言ってんの、あんたも十分役に立ってるわよ。」
姉さんにデコピンを食らう。そんなこと言われても全く実感がない。
「例えば?ご飯作ったり、家の掃除したり、洗濯したり、買い物行ったり…」
期待して損した。結局そんなことだけじゃん…
「姉さん、無いなら無理に言わなくてもいいよ。」
これ以上言われてもみじめな気分になるだけだ。姉さんはびっくりした顔をしている。
「無理なんかしてないわよ。あのね、私が言いたいのは、あんたが帰ってくる場所を守ってくれてるから敦彦くんも安心して戦いに行ける、ってこと。」
帰ってくる場所か…考えたこともなかったな。でもそれだけでいいのかな?
「何言ってんの、私や交野くんがあんたみたいにマメにできると思って?」
…それもそうか。うん、それは俺の役目だな。
ふー、今日のバイトは疲れたなあ。早く帰ろ。マックさん日本語片言だから教えるの大変なんだよなあ。良い機会だし英会話でも習おうかなあ。いやいや、イオが大学行きたいって言いだすかもしれないしお金はできるだけ貯めておかないと、うん。
「お疲れさま、レボルト。これ飲む?」
おっ、ありがとう。渡された缶コーヒーを受け取る。…ん?誰だ?振り返るとEVアーマーが立っていた。
「そう身構えないでよ。君と戦いに来たわけじゃない。」
警戒する俺を手で制して話を始める。
「僕の名前はカイ。実はね、志波君に情報提供してたEVは僕なんだ。」
こいつが、でもなんでそんな話を俺にしに来るんだ?
「僕がオメガのこと教えたせいであんなことになっちゃってさ、ちょっと責任感じてるんだよね。志波君のEVへの憎しみがあれほどだったなんて予想外だった。」
大牟田さんのことか。そうだよな、あの二人もともとは友達だったんだよな…
「…憎まれるのも仕方ないことかもね。EVは人間を襲うんだから。でも僕は人間を襲うのなんて間違ってると思う。人間とEVが共存できる道を探したい。そして志波君をEVへの憎しみから解き放ってあげたいんだ。」
こいつ…そこまで志波さんのことを。でもどうして?
「彼ね、僕のことを殺す、って言ってくれたんだよ。すごく嬉しかったんだ。…ああ、そういう意味じゃないよ?僕達EVのこと、地球に暮らす生き物の一つとしてみてくれてるんだ、って思ってさ。」
そっか。EVも悪い奴ばっかりじゃないのかもしれないな。それなら、こいつや大牟田さんみたいな奴となら、きっと共存できるはずだ。
「…お前の気持ち、しかと受け止めた!」
固い握手を交わし、立ち去っていく。…とりあえず帰るか。
「おかえり、敦彦。」
家に帰ると流さんが出迎えてくれた。なんか今日いつになく機嫌よさそうだな。
「今晩飯用意するからちょっと待っててな!」
本当に様子がおかしいな。普段ならもっとクールぶってるのに。リビングにいた蜜絵さんに何かあったのか聞いてみる。
「あ、うん。最近ちょっと元気なかったみたいなんだけど杏さんと話してすっきりしたみたい。」
つまり何があったかは蜜絵さんも知らないのか。まあ、生き生きしてるし別にいいか。
「やっぱり姉弟っていいものだねえ。」
「蜜絵さん、羨ましいの?」
「べ、別に羨ましくないもん。私にはイオちゃんがいるもん!」
「イオは俺の妹なんだけど…」
そんな話をしていると流さんがいつのまにが夕飯の用意を済ませてくれていた。「しっかり食えよ!」といつになくハイテンションで言ってくる。…面白いししばらくこのままでいいか。
「いただきます!」
「敦彦くんってホントおいしそうに食べるよねぇ。」
「うん、流さんの料理食べるとさ、帰ってきた、って感じするんだよね。」
14話・完




