1話「俺はレボルト」
廃鬼が出現しました。近隣住民の皆様は直ちに避難を開始してください。繰り返します、廃鬼が出現しました直ちに避難を――――
街中に警報がけたたましく鳴り響いている。しまった、完全に逃げ遅れた。逃げ遅れたっていうか、これ、逃げられない。廃鬼が破壊した建物の瓦礫に挟まって身動きが取れない。
廃鬼が、壊れたテレビや冷蔵庫がいっぱい引っ付いた化け物がこっちに迫ってくる。
どうしよう私死んじゃうのかな? ああ、ごめんなさいお母さん、お父さん。私ももうすぐそっちに行くことになりそうです。
涙目になりながら廃鬼のほうに目をやると一人の少年が立っていた。私と同い年くらいだろうか、しかしその背中は、情けない顔をした私とは違って堂々たるものだった。
うわあ、なんて頼もしい姿なんだろう。いやいやそうじゃなくて。この人何やってんの?何で逃げないの?そんなことを考えていると、少年はこちらに振り向き笑顔で口を開いた。
「泣かないで、お嬢さん。俺が来たからにはもう大丈夫だ!」
……泣いてないもん。でも、もしかして私が動けないのに気付いて助けに来てくれたのだろうか。ありがたい、本当に嬉しい。しかし廃鬼はすぐそこまで迫っている、私を担いで逃げ切るのはかなり難しいだろう。
「私のことはいいから! あなただけでも逃げて!」
力を振り絞ってそう叫ぶと少年は不思議そうな顔をした。少年は「ああ」とつぶやくと腕につけていたブレスレットに乾電池のようなものをセットした。
「違う、違う。俺があいつを倒すの。」
聞き間違いか? 彼は今、倒すといった? もし聞き間違いじゃないなら、彼は頭が悪いか、頭が悪いかのどちらかだろう。
バカなこと言ってないで早く逃げなさいよ、お願いだから死に際に後味の悪いもの見せないで。
そんな私の思いとは裏腹に少年はずんずんと廃鬼のほうへ進んでいく。もうダメだ、私はあきらめて見守ることにした。
さようなら勇敢な少年。私は君の勇姿を一生忘れない。(私の一生ももうすぐ終わりそうだけど……)
「じゃ、やりますか」
少年はそう言うとブレスレットについていたボタンを押した。さっきから思ってたけどそのブレスレット何?するとそのブレスレットからさわやかな電子音が鳴り始めた。
Thunder armor set up!
Type_“Revolt”
何この音? と困惑していると目の前に鎧のようなものを着込んだ謎の人物が立っていた。あれがあの少年なの?ていうかあれってもしかして……
「ボルテッカー?」
噂に聞いたことがある。廃鬼が出現するとどこからともなくやってくる正義のヒーロー。その鎧には稲妻のマークと「V」の意匠があしらわれているという。
ここ数年めっきり噂を聞かなくなったのでもしかして廃鬼にやられて…と思っていたのだが。まさか彼がそのヒーローだったなんて。二度も勝手に殺してごめんなさい。
「ボルテッカー……」
再びつぶやくと彼が反応した。
「悪いけど俺はボルテッカーじゃない。俺はレボルト、あんたを救うヒーローだ。」
優しい声で訂正された。レボルト。それが彼の名前らしい。
頑張って、レボルト! もうあなただけが頼りなの! そう心の中でエールを送ると、廃鬼の大きな腕が彼に向かって振り下ろされる。しかし彼は避けない。いや避けてよ!
私の祈りも空しく振り下ろされた腕は彼に直撃する。嘘……今度こそ終わった。もう助けてくれる人もいない。ああもうひと思いにやってくれ。私は覚悟を決めて最後の時を待つ。待つ。
……ん? 廃鬼が動かない。一体どうしたというのだろう。次の瞬間廃鬼の腕を見て驚愕した。なんと彼は潰されたのではなく、その巨大な腕を“片手で”受け止めていたのだ。
「電池は無駄遣いするなって言われてるんだけど……」
彼の拳が雷のようなものを纏う。
「けが人もいるしさっさと終わらせないとな!」
再びブレスレットから電子音が響く。
Voltage max! 1,000,000V!
彼は叫びながら廃鬼に向かって拳を繰り出す。
「ミリオンボルトパンチ!!」
だ、ださい……その瞬間彼の拳が廃鬼に打ち込まれ、バリバリと激しい音を立てながら強烈な閃光を放つ。すると廃鬼は崩れ去りただの“スクラップ”に戻った。
すごい……ホントに倒しちゃった……あれが、レボルト。
1話「俺はレボルト」・完