特別な誰かに
初心者です!
一生懸命描きますので、暖かく見守って貰えればと思っております。
更新は週に1回ほどできればと考えています。
「先生なんでいつも僕ばっかりに雑用頼むんですか?」
「え?だってお前、いつも1人だし頼みやすいじゃん。昼休みなんて大体のやつは捕まんないから、お前みたいなやつは助かるんだよ」
少しもオブラート包むような素振りも見せない先生の物言いは別として、先生の言っていることは当たっている。
僕(小鳥遊 楓)は周りに流されるままなんとなく進路を決めて、地元の進学校に通っている。特に目立つことのない僕に好き好んで絡んでくる奴がそう何人もいるわけなく、こうして昼休みに先生に堂々とぼっち宣言されているわけである。
「おーい、何してんの?また雑用頼まれたん?お前相当先生に気に入られてるよな」
後ろから颯爽と現れたかと思うと、軽々しくプリントの半分を持ってしまうイケメン。
こいつが学校の中で気軽に話せる数少ない1人だ。彼の名前は下山拓海。
1年にしてバスケ部のメンバーに抜擢されたというのは有名な話で、身長180cm、顔立ちも整っており、おまけにこの性格だ。すぐに男女共に囲まれる存在となり、まさにリア充を体現しているような男だ。
「そんな気に入られてるとかじゃねーって!こんなのただの雑用係じゃん」
「えー、そうか?俺なら気に入らない奴に雑用とか頼まないけどなぁ」
「じゃあ変わってくれよ」
他愛もない会話を繰り広げながら、教室までプリントを運び終えると、拓海はすぐに友達に呼ばれてまた1人になってしまう。
1人の教室は酷く居心地が悪いため、スマホでもいじることにしよう。
「だぁ〜れだっ?」
いきなり目の前が暗くなり、明るくバカっぽい声が聞こえてくる。
「いい加減やめてくれよな、彩!」
「せっかくお姉さんが会いに来てやったと言うのに、なんだねその対応は」
僕のリアクションが気に食わなかったのかそのまま僕の頭を戯れるように前後左右に揺さぶってくる。
「おい、ちょっと…やめろって…」
頭を揺すられながらも僕の全神経は背中に集中しており、背中にはふにふにと柔らかいものが擦り付けられている。
このめちゃくちゃな女が幼馴染で1つ先輩の楠木 彩。
明るくとっつきやすい性格に胸がちょっと…いや、かなりでかいことから男子からの人気があり、正直今の状況も悪い思いはしない。
「もう、そうだよねー。楓はあの子みたいなお淑やかなお嬢様がタイプだもんねー」
今、僕のタイプが関係あるかは考えないこととして、彩が指した先にはこの学校1番と呼び声高い一ノ瀬 澪が立っていた。
一ノ瀬 澪は艶やかな綺麗な長い黒髪をなびかせ、スタイルも頭も良く、運動神経もいいまさに容姿端麗、文武両道の完璧美人である。
たしかに僕はこの一ノ瀬 澪のことが気になっていた。好きとか嫌いとかではなく、彼女と僕は似ている気がしたからだ。
休みになれば人が集まり、僕とは違う意味で先生に頼られる彼女と僕に接点などあるはずもなく、ただ周波数というか雰囲気というか曖昧な表現しかできないが、彼女から目が離せなかった。
でも、僕に彼女に話しかける勇気などなく、適当に彩をあしらうとまたスマホに視線を戻す。
結局僕は平凡な人間で彼女のような主役になれるわけもなく、もしそれがあり得るとすれば特別な誰かからの働きかけでしかないのだ、例えば一ノ瀬澪のような特別な誰かに。