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ガレオン船と茶色い奴隷【改訂版】  作者: 芝原岳彦
第三章 流転する運命
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第80話 異変

 そこにニコラスが帰ってきた。

「おお、二人とも待たせたなあ。いまから急げば夕方にはエル・デルタに帰れるだろ」

「ニコラスはどこに行っていたのですか?」

 ヨハネは尋ねた。

()()()()のとこよ。あいつはこの島で暮らしてんだわ。浜でな、魚の腹開いて綿わた抜いてたわ。相変わらず暮らし向きはよくねえみたいだが、俺が今まじめに廻船やってるって言ったら、笑ってたわ。昔みたいに笑ってたわ。それでも家には入れてもらえなかったけどよう。まあ、そのうち()()()()の心もほぐれるだろ」


 そう言うとおやじさんは二人を促して船に乗せると、船を潮に乗せるべく、漕ぎ手に指示を出しながら櫂を動かし始めた。

 船は三日掛けて他の島々を調査した後、四日目にエル・デルタの街に向かって戻った。


 エル・デルタは、初夏の夕日に照らされて赤黄色あかきいろに光り輝いていた。ヨハネは、海を行く船の上からその街を()()()()と眺めた。

 自らの身が売られてきた街、体が擦り切れるほど働いた街、その建設と拡大にわずかながら参加した街、そしてたくさんの人々に出会った街。

 彼は海上の空気の中に夏を感じた。先ほどから胸がざわめくのはそのせいだと思った。


 やがて波止場が近づくと、誰かが大きく手を振っていた。ヨハネはそれに向かって手を振り返した。

「あれは誰だろう」

 ペテロは言った。

「たぶん、パウロだ」

 ヨハネは手を振りながら答えた。

 船が近づくにつれ、青白く変色した顔のパウロが、ちぎれんばかりに腕を振っている様子がヨハネの目に入った。


 何か起こったのだ。

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