第71話 大成功
市場の日の朝、女奉公人たちは前日に織り上がった綿織物を、円柱状の長い棒に巻き付けた。それらは織物を出荷するために使う特注の棒だった。それを二十本、男奉公人たちが馬車に積み込んだ。パウロとメグ、そしてマリアが馬車に乗り込んだ。ヨハネは御者台に上った。
ヨハネは久しぶりにマリアを見た。
マリアは黒銀色の髪をきれいに編んで頭の後ろでまとめていた。彼女の頬はふくよかに丸く膨らみ、浅黒い肌はみずみずしく生命力を湛えていた。彼女の腰に巻かれた帯のせいか、その胸は服を押し出すように大きく張り詰め、腰まわりは豊かに肉付いていた。以前に合った時には分からなかったが、マリアの目は、エリアールでよく見る茶色の瞳だった。
しばらくヨハネはマリアの姿を見つめていた。マリアは、その丸みを帯びた唇を開いて、真っ白な歯を少しだけ見せると、ヨハネに問いかけた。
「どうしたの?」
ヨハネの鼻孔の奥に、昔どこかで感じた、懐かしい匂いが蘇えった。
「いや、なんでもない」
ヨハネは馬に鞭を打った。馬車は軋み音を立てて走り出した。
市での試し売りは大成功だった。
みんなで出店を組み立て、肌触りを見てもらうための大布を一枚、店の前に垂らした。店に集まった客たちは、その布の品定めをすると大きさを指定した。
メグは、首から赤い紐で大きな裁ちばさみを下げていた。
それで布を裁たち、丸めて、それも赤い紐で結ぶと客に手渡した。その紐は、この日のためにマリアとメグが特別に染めた紐だった。支払いはビタ銭や良銭、時には銀貨でも行われた。布を棒ごとまとめ買いする客もいた。ヨハネは受け取った代金を貨幣ごとに箱に分けた。客が殺到して出店が倒れそうになるとパウロと共に柱を押し返した。木箱は銭と銀貨で溢れ、ヨハネは慌てて別の箱を探しに走り回らなければならなかった。
短い時間で布はすべて売り切れた。四人は出店の内側に呆然と座り込んだ。みな心地よい疲れと満足感を感じて、通りを行く人々を恍惚としながら眺めた。
その中の何割かの人間は、赤い紐ひもで縛られた真っ白な布を小脇に抱えて歩いていた。




