69/106
第67話 美しき横顔
土埃の舞う市場にはほとんど人がいなくなった。
ヨハネはそこでペテロの横姿を見出だした。ペテロはヨハネから見て右側を向いていた。背の高いペテロは、美しい金色の髪を雑踏の風になびかせ、澄んだ目で何かを見つめていた。その遠くを見つめる横顔は、何かを思い詰めた少年のように、目を潤ませ背を伸ばしていた。それは、人間の心が、何かに向かって強く強く研ぎ澄まされる時の人姿だった。
その姿をヨハネは心から美しいと思った。
ペテロの視線の先には何があるのだろうかと、ヨハネは右を向いた。そこには一人の娘が織物の店の主人と話していた。彼女はいつもの通り黒い女中服を着て、外出用の帽子をかぶっていた。その帽子に入り切らない金色の髪が帽子から溢れていた。
その娘は、メグだった。
ヨハネは、ああ、そうなのか、と悟った。
そしてゆっくりペテロへ向かって歩いた。




