第64話 麻痺する罪悪感
次の日、ヨハネはまた奴隷を市場から商会の奴隷小屋まで運ぶ仕事の指揮を執った。彼は体で覚えたいつもの作業を、冷たく重い心のままで行った。馬車は、現金輸送用の馬車一台に奴隷運搬用の馬車二台、計三台だった。真っ黒な奴隷運搬用の馬車には、エリアールやエル・マール・インテリオールの島々から運ばれてきた若い奴隷たちが詰め込まれた。ヨハネは、馬車を一列に並べさせた。先頭が現金輸送用の馬車で、その後の二台が奴隷用の馬車だった。彼は奴隷たちが逃げにくいように、奉公人たちを馬車列の周りに配置した。列の先頭に穂先なしの槍を持った古参の奉公人を走らせて、列の両側には経験の浅い奉公人を付けた。そしてヨハネは馬車列の殿を走りながら馬車隊全体の様子を左右に動きながら監視した。
土埃が隊列を覆った。
この仕事をヨハネは奉公人になってから、何度行っただろうか。彼はいったい何人の奴隷の売買に協力したのだろうか。しかし彼には選択の余地などなかった。ヨハネは飢えから逃れるために、身を売った。たまたま字を書けて簡単な計算ができたから、奴隷ではなく奉公人になった。
人々は彼をどう思うのだろうか。
冷血な奴隷商人の仲間と思うだろうか、それとも彼の心を推し量ってくれるのだろうか、もし彼の母やティーが今のヨハネを見たら、彼にどんな言葉を掛け、どんな視線を送るだろうか、そんな事を考えながら、ヨハネは走った。
ヨハネは奉公人頭になりながらも相変わらず裸足で通りを走った。彼は三台の馬車列を最後尾から監視しながら、パウロの後姿を認めた。
物覚えの良いパウロはすぐに馬車の扱いを覚え、御者の仕事に就いていた。その後ろ姿はいつもよりも冷たく、ヨハネを拒絶しているかのように、固い輪郭を土埃の中に浮き立たせていた。




