第41話 海市場
二人は肩を並べて広い中央通りを歩いた。
通りの中央では埃が立たないようにワクワクの老婆たちが桶に入れた水をひしゃくで撒いていた。どの店も店内には帳簿がぶら下げられ、店主やその女房がペンで帳簿に数字を書き付けていた。店先には、組合に出店料金を払った証拠の焼印つきの木札もぶら下げられていた。
右手は様々な肉の店が続いていた。
牛の足専門店は、軒先につるされた何十本もの売り物のせいで店主の顔が見えなかった。
鶏をカゴのままで売る店は暴れる鶏が羽を撒き散らすために客たちに避けられていた。
店先で鹿肉を焼いて売っている店はその白い煙のせいで店主が咳き込んでいた。
鶏の卵を売る店の店主はザルに網をかける作業に必死で卵を買いに来た客をほったらかしにしていた。鵞鳥の店は丸焼きにしたそれを店先の庇にきれいに並べ、その下には細切れにしたその皮を揚げておやつ代わりに売っていた。
「安いよ安いよ」
「お兄さん見てってよ」
「この元気なにわとり買ってってちょうだいよ」
「今日はいい卵をたんと産んだんだ。買っていきな」
「まけるよまけるよまけるよ」
店主たちは声を張り上げて呼び込みをしていた。
左手は海産物の店が並んでいた。みな大きな板を店先に並べ、その上に売り物を並べていた。
鰹を規則正しく並べている店があったかと思うと、小さな鰯をタライに山積みにして一山いくらで売っている店もあった。
大きなエイを裏返しにして並べ、その腹がまだ蠢いている様子を客に見せている店もあった。
ある店は人間の背丈ほどもある縦長の桶を海水で満たし、その桶の一番下に竹の筒を取り付けて排水させていた。その筒の先は塞がれ、筒の横にはいくつかの穴があけられて、水が噴水のように飛び出ていた。その穴は、筒の両側に置かれた大ダライに海水を常に送り込んでいた。そのタライの中には、金目鯛や穴子、カワハタ、ギジハタ、黒鯛、サヨリが元気いっぱいに泳いでいた。
しばらく進むと次は貝や海老の店が続いた。頭をくし巻きにした女が、ザルを幾つも並べ、その上にたくさんのサザエやアワビを並べていた。アワビはひっくり返され、怪しく動いて客の目を引いていた。
「そこのお二人さん、今さばいたばかりだよ。生で行けるよ」
その店の女房は、アワビの殻を皿にして切り身を突き出して言った。
その隣の店では大ダライに海老と蟹が入れられて、客を呼び込むかのようにはさみを動かし、海水を噴き出していた。
「お兄さんたち買ってってよ。うちの海老は水に投げ込んで煮るだけでいい汁になるんだ」
店主がそう叫んでヨハネの左腕を取ろうとした。
ヨハネは振り払って小走りに逃げた。後からペテロが笑顔で追いかけてきた。海産物の店主たちは、傷みやすい品を扱っているせいか、客引きが強引だった。




