表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガレオン船と茶色い奴隷【改訂版】  作者: 芝原岳彦
第一章 奴隷たちの島々
23/106

第21話 火傷のニコラス

 ヨハネは、解体した材木の運搬をもう一人の人足と対になって行った。ヨハネは何度も材木の間に指を挟み、古い釘に手のひらを刺し貫かれた。血と埃にまみれながら、それでも彼は働き続けた。


 ヨハネと作業をしている人足は中年の大男で、作業に慣れているのか、ケガをした様子もなかった。その男が来ているシャツの襟は垢で赤茶色に変色していた。そしてその胸元からは大きな火傷の跡が見え隠れした。その男はヨハネを見ながらにっこり笑ってガラガラ声で言った。


「おまえ、ドジだな。ケガばっかりしてるじゃねえか」

 そしてヨハネの顔と体つきをじろじろ見ながら底響きのする声で尋ねた。

「おまえ、ワクワクか?」

「いいえ、違います」

 ヨハネは戸惑いながら答えた。

 その大男はさらに問い詰めた。

「そうだよなあ。青い目してるからなあ。でもワクワクの血が混じってるだろ。そうだろ。体つき見ればわかるんだよ」

「さあ、どうでしょう」

 ヨハネは誤魔化した。

「隠さねえでもいいんだよ。市参事会しさんじかいの人足なんて貧乏くじ引かされるやつはたいていワクワクの血が入ったやつさ。上はわかって選んでんだ。それによう、俺もよう、ばあさんがワクワクなんだわ。混血よ。おまえもそうだろ」

 そう言ってその大男は満面の笑みを浮かべた。


 ヨハネはワクワクの出自をここまで明るく話す人間に始めて会った。そして、少し間をおいて答えた。


「……北の山向こうにある村の出です」

「やっぱそうか! おれのばあさんもよう、北の山を越えた砂の村から売られてきたんだわ。もしかしたら俺たち親戚かもしれねえぜ」


 そう言うと、目を大きく見開いて口をすぼめて突き出した。彼の左頬にある大きなほくろからは、長い毛が生えていた。それが風になびいてミミズのように動いた。ヨハネはつい噴き出して笑って答えた。


「そうかもしれない」

「おれはニコラス。火傷のニコラスなんて呼ぶやつもいるな。お前さんの名前は?」

「ヨハネ。アギラ商会のヨハネです」


 その時、馬のいななく声が聞こえた。市参事会しさんじかいの世話人が馬車で水とパンを持って来た。人足たちは声を上げて喜んだ。

 馬車に積まれていたのは樽に詰められた清潔な水と、木箱に入れられた黒パンだった。みな馬車に群がると樽を割ってひしゃくで水を飲み、争って黒パンに手を伸ばした。土埃にまみれた人足たちが馬車に群がり飲み食いする姿は異様な光景だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ