表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガレオン船と茶色い奴隷【改訂版】  作者: 芝原岳彦
第一章 奴隷たちの島々
21/106

第19話 沸き立つ命

 ヨハネは傷だらけになりながら、生垣の中を再び通り抜け、裏路地に立った。元から擦り切れほころびていたヨハネの服は、棘と刃のせいでぼろ布の塊のようになっていた。手も足も顔も傷だらけで、傷口から流れる赤い血が固まって、体のあちこちにこびり付いていた。それでもヨハネは痛みを感じないほど興奮していた。いままで惨めな人生を送ってきたが、この夜、生きる喜びを初めて暗い道で見つけたような気がした。裏路地をゆっくり歩き、そっと奉公人小屋の扉を開けて、自分の寝台にそっと身を横たえた。


 ヨハネは疲労困憊ひろうこんぱいして、今にも眠りに落ちそうだったが、なぜか眠れなかった。


 ティーへの想いだけが原因ではなかった。彼の若い全細胞がその生命力の使いどころを求めて燃えたぎっていた。彼は寝台の上で上体を起こすと、シャツを脱いで半裸になった。寝台の上に胡坐をかき、胸を張ると自分の上半身を指で丁寧に確かめた。痩せて傷だらけだが、若くて健康な肉体だった。その内側では活力が沸き立っていた。だが、それを生かす術を未熟で若いヨハネは知り得なかった。ただただ、彼の若さは体内ではじけ回るだけだった。何かを思いついたようにヨハネは右手の拳で自分の胸をドン、ドンと叩いた。何回も叩き続けた。そうするしか生命力のざわめきを押さえる方法を彼は知らなかった。あまりに強く叩きすぎたために、強くせき込むと、ヨハネはシャツを着なおして、垢と汗にまみれた掛け布にくるまって眠りに落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ