プロローグのプロローグ
本当に冒頭。映画なら10秒で終わるシーンですね。
砂混じりの風が吹き荒れる荒野。
草はあまり生えず、固い土と、たまにゴロゴロと転がっている岩があるのみ。
サバンナの草がもう少し禿げた環境と言えば、分かりやすいだろうか。
とても乾燥していて、1年の中で雨はほとんど降ることも無い。
雨季と乾季と季節がはっきり分かれているが、今は乾季真っ只中だ。
人間など、こんな環境ではまともに生きていくことも出来ない。
そんな環境の中に、延々と真っ直ぐ遠くへと伸びてゆく二本の線路。
人の身には過酷な環境であるその場所に、自然の物の中に一際目を引く人工物。
ここが地球であれば、決して交わる事のない2つの要素。
しかし、ここに住む動物たちは皆慣れたように線路を跨いで渡る。
線路がここにあるのがまるで当たり前であるというように。
夕日の照りつける黄昏時。
勢いよく空気が吹き抜ける音が、どこからか響き始める。
やがてその音は少しずつ大きくなる。と同時に、彼方に黒と銀の物体が近付いてきた。
頭から吹き出す真っ黒な煙、横から吹き出す白い煙。
ボォー! という重く響く汽笛を鳴らしながら走ってくるそれは。
かつてアメリカで何十両の貨車を引っ張っていた4000形機関車、通称ビッグボーイ。
その第1番目に作られた4000号機。
地球ではもう現存していない機関車が後ろに何両もの車両を引っ張り、こうして今も”ここ”で現役に走り続けていた。