自壊の輝き
圧覚、痛覚、温冷覚、聴覚、嗅覚、視覚――すべてが出鱈目なこの戦場。
ゴシック様式であり歯車が噛み合う、機械仕掛けの協会のステンドグラスから差し込む陽光に、雪斗は眩さと、言葉にするには自身の語彙力では説明しずらい満ち足りた心境に浸る。
残り数歩――エーデルとの間合いを詰め、雪斗の拳が彼女を打ち抜くまでの距離。
「打ち込むなら本気で来て。さもなければ、貴方が、爆ぜるわよ」
意味の分からない音が雪斗の耳に届いたのは、彼女に拳を放つ瞬間だった。
当然だ。
非常識を相手にしているのだ。手を抜いて勝てるなんてこれっぽっちも思ってなどいない。慢心は敗北だ。相手が非常識でなくても、彼の日常で、自分と同じように社会に背を向け粋がっている不良相手にさえ、手加減なんてした覚えはない。そう――彼は加減という優しさを持ち合わせてなどいない。常に全力で真っ直ぐに生きていた。
「わりぃな。俺は手を抜くつもりはねぇ!」
「…………」
日々の件かと隣り合わせな彼の傷だらけの拳はエーデルの腹部にめり込む。が、痛みを感じていないかのように、呆然と立ち尽くし、どこか悲し気な瞳を雪斗に向けていて、何かを伝えたいが、その手段が分からないと言った風に口を引き締めていた。
「言いたいことがあんなら、しっかり言葉で伝えろ!」
雪斗の声が届いているのか、まだ聞こえていないのかは分からない。
「自壊を成せ! 私に最高の輝きと幕引きを――」
もう一発、魔力を貪り散らす拳は彼女の胸元に叩き付ける。
「学習しろや! 俺の魔力を削る能力の前では……ッ!?」
異変は彼女ではなく、雪斗でもない。
全体に埋め込まれた歯車が、焦げ臭さと白煙を発しながら、高速回転し始めた。
いったい、何が起ころうとしているのか。この場に居る全員が、この異様な雰囲気に危機感を感じていた。が、動こうにも上手く身体がいうコトを聞いてくれない。
まるで、脳からの身体全体に送られる電気信号が停止してしまったかのように……。
「うおっ? 動けねぇ……てめぇ、今度は何をしやがった!!」
「ふふ、貴方の愚直なまでの真っ直ぐさ、私は好き。考える前に、動く……まるで、獣ね」
笑っていた。
こんばんは、上月です(*'▽')
約一週間ぶりの投稿です。
私に……私に書く時間を~( ;∀;)
と言いつつも、ようやく時間に余裕が生まれてきたので、もう少しだけ投稿ペースが上がると思います。
次回は、一応今週中を予定しています!