時間差を生じさせる戦場
二人の戦いを遠目に観戦していた蛍達は、一体なにが起きたのか、状況が呑み込めずにいた。
「えー、これって何がどうなってるんだ?」
「僕に聞かれても困る。怜央、これってどうなったの?」
「いや、私に聞かれても困るわよ!」
誰も彼もが今起きたコトへの説明を求めていた。
「う~ん、時間のズレかなぁ?」
悠理がなんとなく呟いた言葉に一同は首を傾げる。
「時間のズレって……どういうこと?」
「私もよく分からないんだけど、そんな気がする。でなきゃ、こんな意味不明な現象に説明がつかないかなぁ」
二人が第二ラウンドを始めてからというもの、全ての物事に時間差を生じていた。
言葉が口の動きに合っておらず、雪斗が吹き飛ばされ、背から勢いよく壁に叩き付けられたが、何の痛みも感じていないかのように立ち上がったかと思えば、苦悶の表情を浮かべ、それから数秒後に全身を丸め蹲る。
全ての感覚や行動に絶対的なズレが生じているのだ。
その異空間に起こっている不可思議な現象を誰よりも一番、身に染みていたのは雪斗本人だった。
「くそが……気持ちわりぃ、なんなんだよ! この……感覚はよッ!」
「私の能力の全盛期。さっきのは能力が衰退しきったカスみたいなもの」
痛みと内部の衝撃で視界が定まらずも、目の前の非常識に意識を保つが、口の動きと声のばらつきに苛立ちが余計に募る。
「どうして、最初から使わなかった?」
「……もう、私に時間が無いから、自分の命が可愛かった」
「じゃあよ、今はもう自分の命に未練はねぇってコトかよ。あぁ!?」
「そうね、ただ衰退して死ぬより、この戦いを最後に輝きたくなった。それだけよ」
雪斗は、そうかよ、とつまらげに吐き捨てる。
「だったら、最後は俺が看取ってやっから、全力で来やがれ!!」
魂を削る拳と魔力を削る拳を握りしめ、痛む全身は気合で忘れ、大きく地を蹴り距離を詰めるその姿を、灰色の瞳は静かに映していた。
こんばんは、上月です(*'▽')
書く時間が取れず前回の投稿から時間が経ってしまいました(^-^;
次回の投稿は申し訳ありませんが未定となります。