エーデルの最後の輝き
抗うコトを許さぬ強制的な束縛。己の死の瞬間を視認しつつ、死に向かい足を運ぶ。
雪斗の額には脂汗と冷や汗が互いに交じり合い、ゆっくりと、ゆっくりと徐々に死との距離を縮めていく。
「くそ、言うコトを聞きやがれェッ!!」
「抗いなんて無意味。もう、貴方の運命は描かれているの。だから、諦めて受け入れなさい」
冷めた微笑みを浮かべるエーデルとは対照的に、雪斗は最後まで抗うコトを止めぬと全身の筋肉に力を込めているせいで、顔は真っ赤に染まっている。
ああ、こんな決められた運命なんて誰が受け入れられようか。未来とは本来、己の意志をもって紡ぎ広げていくもの。雪斗自身、誰かの言いなりになったり頭を下げるたりするコトを最も嫌う。だから、親や学校、社会に反抗的な態度を取るというのは、己を認めさせ、誰の指図も受けてたまるか、とういう雪斗なりの意志表示だった。
幼稚だということは分かってはいる。だが、これ以外に己の見せ方を知らないのだ。
気に食わなければ恐喝し、殴り、蹴り飛ばす。
「そうだ……」
そう――彼は己を束縛する全てのモノには等しく力を持って打破すると決めていた。
「抗えねぇのは肉体だけみてぇだな! なら、これはどうだッ」
手に魔力を流し、己の力を発現させる。
「いかなる力を持ってしても、未来は……決まって――えっ?」
エーデルはその時初めて感情を有した表情を浮かべて、目を見張った。
「俺の力には抗えなかったみてぇだな!!」
雪斗は歩を止め、勝ち誇った笑みをエーデルに向けていた。
「ありえない。どうして? 私の能力は絶対優勢型なのに……」
自身の能力を打ち破られたことで思考が混乱し、エーデルの魔力にブレが生じ、雪斗の残影もユラユラと消失してしまった。
「知りてぇなら教えてやるよ。お前の未来を創り上げる……いいや、時間逆行によって相手の行動強制か? まぁ、どうでもいいか。その能力は対象にテメェの能力を押し付けて発動する代物らしいな。生憎と俺の能力とは相性がワリィんだよ」
「…………」
魔力を暴走させる獣の恩恵を受けた腕を見せつける様に持ち上げてみせる。
「そう……だったわね。ふふ、面白い子。魔力を削り取る獣と魂を食らう獣……私の能力も落ちたわね。なら、いいわ。最後の輝きを見せてあげる。私のとっておき」
エーデルは自虐的に口角を持ち上げて笑うや、腰まで伸びた白髪が、まるで時を遡るかのように縮み、肩甲骨あたりで長さで止まる。くすんだ灰色の瞳もどこか活力に満ちているように見える。
「髪が短くなったくらいで、何が出来んだよ」
「さぁ、お楽しみはこれからってことよ」
互いに笑う非常識と常識は全力でぶつかりあう。
こんばんは、上月です(*'▽')
投稿が少し遅くなってしまいました(^-^;
次回の投稿は未定ですが、よろしくお願いします!