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機械仕掛けの大聖堂

 やはり、待ち合わせは山の中にひっそりと身を隠している教会だった。


「あ~、もう! 真夏の山は虫が多いから嫌いです!」

「ははは、怜央ちゃん。肩に蜘蛛がとまってるよ~」

「ちょ!! はぁ、いやぁっ!!」


 悠理の言葉に怜央は身体を激しく動かし、蜘蛛を払おうとするが、それが悠理の冗談だというコトに気付き顔を真っ赤に染め、そっぽを向く。


「ったく、うっせーぞ女子共。これから戦うってのに緊張感のねぇ奴らだ」

「戦うのは雪斗だけどね」

「そうそう、俺達は観戦だから気が楽だわ」

「チッ、オメェらも他人事だと思って……」


 真夏の蒸し暑さと周囲のお気楽さに頭痛を覚え、雪斗はこめかみを抑えては大きく溜息を吐く。


「雪斗は昨日一人で訓練するって言ってたけど、大丈夫なの?」


 睦月が小さな声で囁くと、雪斗は後頭部を掻き微妙な表情を浮かべる。


「知らね。一応クルトが訓練に付き合ってはくれたけどな。正直、何か変わったとかそういう感じはしねぇ……」


 だが、昨日クルトが言った言葉が雪斗の脳内にちらつく。


「負けないと思う……か」

「えっ、なに。何か言った?」

「いや、なんでもねぇ。んなコトより、後ろの馬鹿どもを静かにさせてくれ。気が散って仕方がねぇ」


 背後には悠理につっかかる怜央と、それを見て大笑いする俊哉。それを傍から静観する蛍という面子に睦月も苦笑いしかでない。


「もうすぐ協会に着くし我慢だね。私が言ってもたぶん聞かないとおもうし」


 睦月も匙を投げていた。


 そんな背後の雑音を聞き流しながら山道を登っていくと、廃教会が姿を現した。


「こんな暑いのに頭からスッポリとローブ着てお出迎えかよ」


 教会の扉の前には案内役のカルディナールではなく、一人の人物が静かに立っている。この場に居る全員がこの人物こそ、クルトを除けばナンバーツーの非常識カミであり、今回の対戦相手であるエーデル・ヴィンターその人であった。


「…………」


 何も言葉を掛けるでなく、目深に被ったローブから僅かに覗かせる眼で、ジッと雪斗を品定めするかのように見つめていた。


「んだよ。口が利けねぇわけでもねぇだろう」

「…………」

「チッ、シカトこいてんじゃねぇぞ!」

「…………」


 エーデルは指を天空に示し、ゆっくりと何かを描いていくが、それが何なのか、どういって意味合いがあるのかなんて分からないが効果は直ぐに見て取れた。


 空間が歪んだのだ。


 この感覚に慣れてきていた蛍たちは、これが己の戦場を展開しているのだというコトを悟り。いよいよ気持ちを引き締める。


「なんじゃこりゃ……スゲー!」


 感嘆の声を上げる俊哉に周囲から同意の意味合いをとるかのように生唾を飲む音や、吐息が漏れる音が聞こえた。


 今回の戦場とは――。


 一見してゴシック様式の大聖堂なのだが、その壁面や天上には歯車が埋め込まれ、それが全て規則正しく噛み合い回転していた。

こんばんは、上月です(*'▽')


次回はエーデルと雪斗の戦いが今度こそ開始します!

魂と魔力を削る拳を持つ雪斗に対して、エーデルはどのような力を持って迎えるのか!

次回の投稿は5月17日の夜になります

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