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旧世界の魔力と現代の魔力が混ざり合う

「チッ……こんな木偶相手じゃ訓練になんねぇだろうが。もっと、まともな代物だせよ」

「その木偶相手に満身創痍になってるのは何処の誰だろうね。まぁ、望むなら出してもいいけど……無理は死を呼び込むよ」

「今死ぬ気でやらねぇと……クソ、足が笑ってやがる」


 赤に濡れた満月が微笑む世界。


 身体中から血を流し、肩で息をするのがやっとの状態である雪斗と、それを呆れ顔で眺めつつも望み通りに次々と人形を召喚するクルト。


 かれこれ、訓練を初めて七時間が経過していた。


「訓練だったら、キミのお友達に付き合ってもらえばよかったんじゃないのか?」

「それは、駄目だ。あいつらは甘ぇからゼッテェ手を抜くだろ。それじゃ、訓練に意味はねぇ……よっ!」


 左右で異なる能力を宿す拳を襲い掛かる木偶に打ち付けていく。


「オラオラァ! もっと張り合いのあるやつ出せって言ってんだろうが!!」


 クルトは溜息を吐いた。


 いまの雪斗は力の向上を急きすぎている。能力を感覚する事なく、闇雲に殴り飛ばすだけで上達するはずがない。であれば、だ。クルトは悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべた。


「おい、雪斗。俺と少し手合わせしてみないか?」

「ああ? なんだよ、ラスボスが直々に鍛えてくれんのか?」

「暇潰しだよ。それと、ラスボスは俺じゃない」

「そうだったな、オメェは中ボスくらいだったわ。んじゃ、早いところ手合わせしてもらおうじゃねぇか」


 クルトは一度地に伏せたモノも含め、すべての木偶人形を消失させ悠々と雪斗に対峙する。


「その前に――えいっ!」

「いだッ!? テメェ、何しやがる!!」


 あろうことか、これから手合わせしようという相手に向かって何もない宙からサッカーボルくらいの珠を思いっきり雪斗にぶつけたのだ。


 その行為の不可解さと不快さに雪斗のこめかみには青筋が薄っすらと隆起する。


「はははは、よく自分の身体を見てみるんだね」

「自分の……身体――っ!?」


 その意味を即座に理解する。


「おい、これは、一体どういう事だ。怪我が完治してやがる」

「当然、この珠は怪我を治す作用があるんだよね。これで、またバリバリ特訓ができるだろ?」

「ははっ! 気が利くじゃねぇか」


 お互いに褒められたものでは無い卑しい笑みを浮かべあい、それが合図だというかのように魔力をぶつけ合い、拮抗させる。これは、あくまで不良が喧嘩前にするメンチのようなものだろう。


「へぇ、喧嘩のなんたるかを分かってんだな。意外だぜ」

「ああ、昔こうやっていうコトを聞かない子達を黙らせてたからね。懐かしいよ」


 赤の世界を渦巻く旧世界の魔力と現代の魔力が侵食し合い、嵐のような荒々しさが二人の肌を刺激的に撫でていた。

こんばんは、上月です(*'▽')


次回の投稿は28日の夜になります!

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