日常という贅沢
「なぁ、退屈じゃね?」
俊哉はポテトを咥えながら、椅子にだらしなく腰掛け、天井をぼんやりと眺めていた。
「そこの顔面底辺! みっともないからちゃんと座ったらどうです? 一緒にいる人のことを考えてください」
「えぇ~別にいいじゃん。つか、雪斗は?」
ファミレスには雪斗以外のいつものメンツが揃っていた。
「雪斗君は今日は来ないよ~。なんか、明日のために特訓とか言ってたし」
「えっ、特訓って一人で?」
睦月の疑問に悠理は「多分ね」と首肯し、俊哉の目の前に置かれたポテト盛りを一本加える。
そう、今日の集まりは特にやることも無いのだ。本来であれば雪斗の特訓にでも付き合うべきなのだが、本人がそれを拒み、既に自分たちの戦いを終えた蛍達は世間の夏休みをダラダラと過ごしていた。
「意外と普通だね」
今まで飲み物を飲んでいた蛍が不意に呟く。
この場に居る全員が蛍に視線が集まると、本人は小首を傾げてしまう。
「これが、日常なんだなって、そう思っただけだよ?」
「あ~、そういやそうだな。クルト達との戦いとか世界の命運とか無かったら、これが日常……なんだよな」
「そうだねぇ、でもさ、この戦いがなかったら、いまここにいるメンバーで集まる事もなかったんだよね」
「そうね。そういう面ではクルトに感謝だね」
「私からしたら迷惑でしかないですけどね!」
怜央は深い溜息と共にそっぽを向き、窓から差し込む真夏の日差しに眼を細める。
迷惑だと言っても、彼女の横顔からはまんざらでもないと言うように、口許が少し綻んでいたのを全員が確認していた。
「なっ、なんですか!? 人の顔みてニヤニヤするなんて失礼ですよ!」
「怜央、嬉しそう」
「なっ……!?」
表情を引きつらせ、手で口元を抑える。
「あっ! そうだ。ねぇねぇ、蛍君て能力は覚醒したの?」
思い出したかのように悠理が話題を提供すると、俊哉達もハッとする。
「どうなんだ、蛍? つか、今の時点で覚醒してなきゃ不味いだろ?」
「覚醒は……してるよ」
「へぇ、蛍ってどんな能力なの?」
「う~ん……内緒」
こんばんは、上月です(*'▽')
次回の投稿は4月26日になります