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星の軌道が描いた崩壊の陣

 満天の星は大十字に並び、その外周をぐるっと取り囲んでいた。


「ラインって言ったかしら? 少々油断しすぎですわよ。まぁ、お陰でこの術式を展開できたんだけれど」


 怜央は慢心した非常識相手に嘲笑を浮かべて見せる。


「おやおや、私としたことがとんだ油断をしてしまいましたね。ですが、まだ私も術式をお見せしていないというコトをお忘れではないですか?」


 ラインも不敵な笑みを浮かべてはメガネのフレームを指で押し上げては、内包する魔力をまるで格の差を見せつけるかのように放出し、その膨大な魔力量と質に怜央は一瞬たじろぐ。


「凍てつけ、凍てつけ、凍てつけ。醜悪な偶像も、潔癖な絵画も、不平なく永遠にその時を止めなさい……美も腐も(ロンフュ)無差別に(レーヴェ)永遠へ(アシスト)


 真夏のはずだった。


 気温の変化を感じる時すら与えられずに、周囲はガラスが軋むような音を立てて凍てつき始め……いいや、すでに凍てついていた。


 怜央はノースリーブのブラウスに膝丈くらいまでのスカートという出で立ちで、体温を急激に奪われわが身を抱き震え、とうとう膝を折ってしまう。


「展開しなさい! 旧星天と……新星天の狭間にある災いの星よッ!」


 主人の意思に従い、十字の星のちょうど中間部に位置する紅く災いを連想させる一つの星が鳴動すると、配列を組んだ星々がその星明りを増幅させ、まるで衛星兵器のように地上目掛けてその光の幕を照射する。


「星の光では極点の氷世界は溶かせませんよぉ? せめて、太陽の熱くらいでなければねぇ」


 勝利を確信し相手に不快な苛立ちを覚えさせる見下した表情をするラインに、怜央は術式を継続させるだけの意識を保つことで精一杯であり、彼の言葉を正確に聞き理解する余裕は無かった。


 だが、天井から降る光のヴェールが地上に到達し、怜央はそこでようやく逆転を見出した。


「おやおや、星の光というのも温かくないモノですね。この程度の力が貴女の能力なのですかな?」

「違うわよ。よく……周囲を見てみなさいよ」

「……これは!?」


 月の光が注ぐ場所はまるで時間の流れが急速に進んでいるかのように腐敗していく。


「氷の世界が……崩れていく!?」

星天軌道開始アル カイム――」


 氷の世界は霜のように細かく砕け、吹き抜けた伊吹に乗ってキラキラと煌きながら消失していった。


 そして、星は十字の配列を崩してまた円を書くようにグルグルと回り出す。が、先程のようにゆったりとした動きではない。それぞれが己の役割を熟知しているかのように新たな模様を描く。

こんばんは、上月です(*'▽')


前回の投稿からだいぶ時間が空いてしまい申し訳ありません。

次の話でラインとの戦いに決着がつきます。

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