怜央が魅せる星々の輝き
「怜央ッ!?」
睦月を始めとし全員が地面に倒れ伏す怜央に駆け寄ろうとするが、ムーティヒとカルディナールに遮られる。
「おい! 銃つかうなんて卑怯だろうがッ!」
雪斗の激昂をまるでそよ風程度にしか感じないラインは肩を竦ませるだけで、なにかを応えようという気概は感じられない。
「テンメェ……」
「はぁ……いいですかぁ? 勝負というのは如何なる戦術を用いてでも勝たねばならないのですよ。ふふ、貴方たちはまだ子供だからその所もよく分かっていないようですね。まぁ、この際に覚えておくといいでしょう。さて、私の演目は終わりの様ですし――個人的なお楽しみといきますか」
ラインは手にもつ拳銃はもう用済みだ、といわんばかりに無造作に投げ捨てる。
「へんてこ眼鏡! 怜央ちゃんになにしようとしてやがるんだよ!」
俊哉はムーティヒの腕を振りほどき、自身の能力で一本の槍を手にしラインに飛び掛かる。
「ふぅ……ムーティヒ、貴女をわざわざ呼んだのは私の戦いに横やりを入れさせない為なんですけどねぇ」
「知るかよ、オメェの悪趣味に付き合わされる俺達の身にもなれやァ」
「まぁ、いいでしょう。小煩い子供は……嫌いですよ!」
ラインが懐からナイフを抜き、突き出された槍の軌道を反らし、そのまま流れるように鋭利なる銀は俊哉の首筋に向かい残影を引く。
「――おや?」
ナイフは俊哉の首を斬り裂くことなく空を切った。
今まで目の前にいた少年がこつぜんと姿を消し周囲を見渡すと、少し離れた場所に片目を髪で隠した少年と共にいる俊哉が、自分に何が起こったのか理解していない様子だった。
「俊哉、まだ勝負はついてないよ」
「えっ……あれ、勝負――そうだ! 早く怜央ちゃんを病院に!!」
「まだ、怜央は負けてない」
「いやいや、それって……あっ!」
そこでようやく俊哉も理解する。
俊哉だけではない。睦月達も同じで、目に映る光景に呆気に取られていた。
「まったく、私が簡単にくたばる筈ないでしょうに」
ゆっくりと身を起こし、愉快そうな感情を押し殺しきれずに笑う。
「生きていましたか、結構です。ええ、これでまだまだ楽しめるというモノでしょうかね」
「楽しみ? そうね、私が楽しむ番ですね」
不敵に笑う怜央の様子にラインは初めて不快な色を表情に滲ませた。
「貴女に楽しむ余裕はないですよ!」
「あら、そう? 上を見てみなさいよ」
ラインは生唾を飲んだ。
その神々しくも背筋に悪寒が走り、ソレから視線を外すことが出来ない。
「星の軌道が……美しい」
こんばんは、上月です(*'▽')
次回の投稿は4月16日となります