星々の術式
怜央は小さな胸の前で腕を組み、目の前で背筋をキッチリと伸ばしドロッとした気味の悪い微笑みをを浮かべる男に、まるで汚物を見るかのような視線を向けていた。
「おやおや、同じ眼鏡族だというのに、そこまであからさまな拒絶をされるとは、少々堪えるものがあるのですがねぇ」
ラインはメガネのフレームを押し上げる。
「同じ眼鏡族ですか? はっ、冗談じゃありませんね。訂正する時間を与えてあげますので、即座に訂正し謝罪する許可も与えてあげますわよ」
「これはこれは、ふふ、手厳しいですね。まぁ、今のは冗談ですのでご安心を――さて、そろそろ始めませんか?」
「なら、ちゃっちゃと始めてください」
怜央は相手が非常識であろうとも尊敬に値しないと判断すれば、その毒舌が徹底的に猛威を振るう。
肩を竦めたラインは手を掲げる。
「我が世界展開せよ」
刹那――。
雑居ビルの一室は瞬く間にその風景を変容させ、一面には歪で悪趣味な、それぞれが絶叫という表情を浮かべて何かを必死に手繰るかのように手を伸ばす像が薔薇の園の至る箇所に置かれて、不気味な雰囲気を漂わせていた。
ここまでか、と怜央は深い溜息を吐く。
「最悪で醜悪な舞台ですわね」
「ふぅ……芸術のなんたるかを理解できない俗物でしたか」
この戦場を飾り立てる芸術性は今、この場に呼ばれた蛍達誰一人として理解に苦しみ、それは同種の非常識の枠組みに収まるムーティヒやカルディナールも同じく、嫌悪の色を隠すことなく現していた。
「私の力を見せてあげるわよ!」
怜央は己の中に眠る一点の輝きに集中する。
その輝きは大きく波紋を起こし、身体全体に行き渡り準備が整った所で小さく息を吸い、術式を展開すべく詠唱を早口に詠う。
「旧星天と新星天の狭間には歪みに満ちた慈愛の星天ありけり、宇宙に散らばる悠久の輝きこそ我が罪の象徴……エーゲ・シュテインリール」
青空には墨を流し込んだかのように真っ暗な夜の世界を創り上げ、満点の星が小さく輝き出してはその全てがゆっくりと円を描くように回り出す。
「これが、怜央ちゃんの能力なのか?」
天空一面の作用する力の規模に俊也や睦月達は生唾を飲み、これから何が起こるのかと静かに見守る。
「ああ、美しいですね……。ですが、少々発動に時間がかかり過ぎなように思えますねぇ」
ラインはスーツの懐に手を潜り込ませ、黒く重厚な質感をその見た目から容易に想像でき、現代が誇る人を簡単に殺し得る凶器が取り出されては、その空洞の先は怜央の眉間に向けられた。
「――ッ!?」
発砲音が静寂な世界に立て続けに四回響き渡り、少女の身体は地に倒れ伏す。
こんばんは、上月です(*'▽')
怜央が術式を展開し始め戦闘が始まったかと思えば、ラインはいきなり拳銃を取り出し怜央に発砲(; ・`д・´)
次回の投稿は明日の夜を予定しております!!