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路地裏で出迎えるカルディナール

「あれ、睦月ちゃんは今日来ないの?」


 海老沢駅前のロータリーで缶ジュースを一口飲んだ俊哉が集まった面子を見渡し、疑問に首を傾げる。


「バンドの練習だとよ……ったく、危機意識がねぇんじゃねーか?」

「もう、雪斗君はカリカリしすぎだよぉ。いいじゃない、本気で打ち込めることがあって」

「何かに本気で打ち込むのは悪くねぇ。だがよ、世界の命運が掛かってるってのにバンドを優先するのはどうかって言ってんだ」


 暑さのせいもありイラつく雪斗を悠理がなだめる。


「この不良の言うとおりよ。でも、誰にでも最後まで続けていたい事ってあるでしょ? ましてや全人類の命を背負ってるのよ? 一時でもその重荷を忘れるくらいしなきゃ、やってられないわ」

「そうそう、怜央ちゃんの言う通りだぜ! 雪斗は見た目不良なのにさぁ、なんでそこまで堅物なんだよ」

「……知るかよ」


 雪斗は深く長い溜息を吐き出し、炭酸飲料を一気に煽りゴミを近くのごみ箱に投げ入れる。


「ナイスシュート!」

「俊哉、テメェ……まじうっせぇよ」

「そんなつれないこと言うなよ~」


 身体を密着させようとにじり寄ってくる俊哉の顔面に渾身の一撃を叩き込む。


「チッ、暑苦しいんだよ! 蛍の気持ちが分かったわ」


 ここまでベットリと引っ付かれると精神的に疲労が蓄積していく。そんな行為によく何年も耐えてきたと内心で蛍を褒める。


「そんで、蛍はいつ来るんだ? アイツが遅刻するってのも珍しいな」

「うん? 僕はここにいるよ」

「……ドワァッ!? いつからそこに居やがった!」

「雪斗が俊哉の顔に一撃叩き込んだところらへん?」


 雪斗の背後に蛍が小首を傾げていた。


「うっす! お前が遅刻なんて珍しいじゃん?」

「うん、ちょっとね」


 あまり、詮索して欲しくない時に蛍がよく使う言葉だった。長い付き合いである俊哉はそれを知っているからこそ深く追及しない。


「そっか。うし! 今日も張り切って行こうぜ!」

「別に貴方方が張り切る必要はありませんよね?」

「そんな寂しいこと言うなよぉ」

「この顔面底辺、顔が近いっていうか、距離そのものが近いッ!」

「ゴベェッ!?」


 怜央の膝蹴りが俊哉の腹部にめり込み、呑みかけていた飲料水を噴き出しながら白目を剥き雪斗の背にもたれかかる。


「おい、怜央! コイツ、どうすんだよっ」

「知りませんわよ。そのまま背負ってあげたらいいんじゃないですか?」

「冗談じゃねぇ! こんなクソ暑いのに、こんな重いもん背負えるか!!」

「あはははは、頑張って男を見せてよ雪斗君」

「おい……蛍、テメェ、こいつと長い付き合いなんだろ?」

「僕は……身体が小さいから無理。だから雪斗、よろしく」


 徐々に距離を開ける蛍。


 今日で何回目かの溜息を吐き出し、背中に蒸し暑い人肌の体温を感じつつも背負い人通り場所を求め路地に入ると、一人の修道女が柔和な微笑みを浮かべて出迎えてくれる。


「皆さんこんにちは、こちらへどうぞ」


 雑居ビルの裏口を開けては少年少女を迎え入れる。

こんばんは、上月です(*'▽')


次回の投稿は4月9日となりますので、よろしくお願いします!

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