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腕相撲大会に赴く父親武人

 退院祝いは直ぐに始められた。


 豪勢な料理の数々に満足げな表情を浮かべて楽しんでいる少年少女たちの姿を見て、クルトとカルディナールもまた微笑みを浮かべていた。


 だが、やはりこの状況を言葉にはせずとも快く思わない者達も存在する。


「…………」

「あ、あの、ヘルトさん。怒ってますか?」


 琴人が黙しただ酒を煽る武人の隣りの席に座り顔色を窺う。


「何故、俺が怒っていなければならない? 琴人、お前には俺が怒っている様に見えたのか?」

「えっと……なんとなく、雰囲気がピリピリしていたので……すいません」

「いや、お前が謝る事ではない。正直、クルトの考えが理解できなくてな。どうして、わざわざこれから殺し合う敵の快気祝いを催しているのか……とな」


 以前のビーチバレーでもそうだが、クルトという存在はどうして彼等人間と関わりを持とうとするのか

。余計な情を抱けばその分、殺すときに躊躇いが生じるというもの。知り合って長い付き合いになるが、これまでの世界でも同じように暇あれば人間社会に溶け込み、その住人達と語らい……そして、殺した。


 今までは情に流されるなんてことは無かったが、今回のそれは異常だった。


「ははは、今の子供ってやっぱりゲームとかして遊んだりしてるの?」

「まぁ、今の時期は外出ても暑いだけだし、冷房をガンガンに効かせてアイス食いながらするゲームはまさに至福のひと時ってやつ?」

「俺はゲームなんてガキのする遊びはしねぇよ。俺はこいつ等に会う前までは暇さえあれば他校の奴と喧嘩三昧だったからな」 

「へぇ、じゃあ俺と腕相撲でもしてみないか?」


 視線の先にはテーブルを挟んで人間と腕相撲に興じる旧世界の魔王の光景があった。


 筋トレを欠かさずしているのだろう。衣服から露わになる腕は太く逞しい。それに比較するとクルトは真っ白な細腕を軽く曲げ、手を握り合う。


「……はぁ」

「……ヘルトさん?」

「ああ、いや何でもない。お前も向こうの子供たちに交じってきたらどうだ? こんな戦争親父といても楽しくないだろう?」

「いえ、そんなことないです! ヘルトさんは……その、お父さんって感じがして、一緒に居たいんです」

「……なに?」

「あわ! す、すいません」


 ヘルトは我が耳を疑い聞き返すと、琴人は慌てて頭を下げてくる。さて、どうしたものか、と手中にある小さなお猪口に注がれた液体を一口に胃に流し込む。


「琴人、お前の父親像とはどんなものだ?」

「えっと、優しくて強くて、渋みのある父親です!」

「優しく、強く渋い父親か……くっく、あの小僧どもと魔王と興じてくる。琴人、お前も来い! ついでに、ムーティヒ貴様もだ!」

「ハァ? どうしてよぉ、俺がガキ相手に腕相撲しなきゃいけねーんだァ?」

「いいから、来い!」

「ちっ……めんどくせェ。カルディナール、治療の準備だけはしとけ? なんか、知らねーけど。ヘルトのやつ張り切ってるからよォ」

「ええ、任せてください。死んでいない限り、どんな怪我も治しますから……ムーティヒ、豪快に骨折してきても大丈夫ですよ?」

「さらっと、背筋の凍るようなセリフはいてんじゃねェよ!」


 腕相撲大会で盛り上がりをみせているなか、非常識の三人のうち一人は戦地へ赴くような意気込みを背で語っていた。

おはようございます、上月です(*'▽')


この一週間忙しく、続きが書けずにいました……(´;ω;`)

次の投稿は明日の予定となっておりますので、よろしくお願いします!

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