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永久の別れ

 それは、唐突に起こった。


「あ……あぁ、クルトォ! ふふ、やってくれるわね。でも……ふふふ、まだまだよ」


 リリアンは胸を押さえ、その場で膝を折り息苦し気に呼吸を繰り返すと、大鎌を支えに立ち上がる。


「貴女は私が立ち上がる未来を視て(つくって)いたのかしらぁ?」

「ああ、もちろんだよ。俺が倒すべきはその少女ではなく、中身のお前なのだからな」

「あら、私を殺すにはこの娘も殺さないといけないのよ? わかるわよねぇ」

「当然だよ。あり得ない未来を創りあげるのが俺の能力なんだからな」

「……そう、なら早くその未来をみてみたいわぁ」


 確約された未来をリリアンは両手を広げ、恋い焦がれた少女のように瞳を潤ませ、手に持った大鎌で愛し人の首を狩るべく地を蹴る。


「ふっ、そう焦るなよ。五秒……四秒……」

「お得意のカウントダウンね。その死の秒読みを聞きながら死んだロンベルトを思い出すわね!」


 空を裂き、続けざまに妖艶なる刃を繰り出すが、黄金色の瞳は刃を追う事無く、難なくと交わしていく。まるで、刃の軌道が既に視えているかのように――もしかすると、この軌道さえクルトが創り上げた未来の一部なのかもしれない、とリリアンは余計に昂る感情に口角が余計に持ち上がる。


「二秒……一秒……零」

「…………」


 リリアンは自分の身に変化を感じることはなかった。ロンベルトのように血反吐を吐き散らし、無様にのたうち回りながら命乞いするその姿を思い描いていただけに、不変という状況に少々の苛立ちを抱いた。


「どういうことかしら、私に何も変化が訪れないのだけれど?」

「そいつは、どうかな。お前の足元をよく見てみろよ」


 言われて、視線を自分の足元に向けるとそこには人がうつ伏せで倒れていた。


「へぇ……こんなことも出来るんだ。面白いわねぇ、ほんとうに私だけを殺すのね」


 地面には悠理が倒れ、そのすぐ傍らには眉目美しい妙齢の女性が大鎌を手に立っていて、いま、この瞬間に何が起こったのか、視認はおろか理解が追い付かない睦月達は言葉を失っていた。


「何度も言わせるなよリリアン。俺は全ての事象を歪めて不条理な未来を創るんだ、まさに万能な能力だろう?」

「ええ、そうね。でも、あの娘を救う未来は創りあげられなかった、万能が聞いて呆れてしまうわよぉ?」

「あれは条理とか世界とかそういう規格から外れた存在だからな――さて、お前もそろそろ返れよ」

「あら、寂しいこと言うのね。せっかく楽しくなってきたのに」

「あと一分でお前は消滅する」

「私から貴女にプレゼントがあるの。受け取ってくれるかしら?」


 リリアンからのプレゼント。きっとこれは、貰っても嬉しくないモノだなと予想を付ける。クルトが創り出した未来はリリアンの消滅までの道筋。故に彼女がクルトに渡したいモノというのは分からない。


「何をくれるんだ?」

「ふふふ、お楽しみ。でも、そうねぇ……少しは役に立つと思うわよ」


 リリアンは愛用の大鎌を地に伏せる悠理の傍らに置き、天を見上げた。


「楽しかったわよ、クルト。クリスティアによろしく伝えておいてねぇ」


 リリアンの身体から実体が希薄化し、大気に溶ける様にその姿を皆の前から消した。

こんばんは、上月です(*'▽')


次回の投稿は3月5日となります。

昨日投稿予定だった『地平線に沈む夕日は明日への希望』は明日の夜に投稿します

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